日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS パフォーミングアーツ事業部 2022年度 活動報告書 目次 1_ごあいさつ  1ページ 2_活動報告  2から15ページ 2022年4月から10月 True Colors CARAVAN  2から7ページ 2022年6月 True Colors Festival in アゼルバイジャン  8から9ページ 2022年9月 True Colors SPECIAL LIVE  10から11ページ 2022年5月から True Colors CHANNEL(オンライン)  12から13ページ 2022年4月から True Colors Festival 公式Twitter(オンライン)  14から15ページ 3_座談会  16から21ページ 3人のプロデューサーと2022年度を振り返る  16から21ページ 4_広報成果  22から23ページ 5_総括  24ページ ※本報告書の参加数、視聴者数、SNSフォロワー数等の実績は、2023年3月15日時点のものです。 《1ページ》 ごあいさつ 日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS パフォーミングアーツ事業部では2019年以来、障害、性、世代、言語、国籍などのあらゆる多様性があふれ、皆が支え合う社会の実現を目指し、ともに楽しむ芸術祭「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」(以下、TCF)に取組んでまいりました。 TCFのプログラムは当初、2020年に開催を予定されていた「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」にあわせて東京を中心に実施していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度以降はオンラインでの実施が中心となり、活動も県境や国境を越えて拡がりました。 これらの経験をふまえ、2022年度はTCFの活動を、全国各地、海外、ソーシャルメディアへとこれまでよりもさらに拡げていきました。アゼルバイジャンでのステージには日本のアニメや漫画のたくさんのファンが足を止め、日本カルチャーの一つとして迎え入れていただいたことが印象的でした。全国7箇所を巡ったツアー企画では、これまで障害のあるアーティストのパフォーマンスや鑑賞サポートなどに触れる機会がほとんどなかった地域の方々へ向け、ステージを届けられたことに意義を感じております。NHKホールでのライブではCARAVAN Performersを筆頭に、イルアビリティーズ、川崎昭仁さんなど、過去にTCFに出演したアーティストに集っていただく機会を作ることができました。YouTubeで展開した True Colors CHANNEL では、パフォーミング・アーツにとどまらず幅広い分野で活躍される方々をインタビューし、公式Twitterでは、これらのTCFの取組を年間を通じて紹介しました。TCFが実際のイベントだけで終わらず、多様性に触れ、インクルージョンについて考える機会として日常的なものとなることを願って活動を続けました。 本活動報告書では、2022年度の活動記録に合わせて、制作者や受け手からの声も掲載しています。ぜひご一読いただき、時代とともに歩みを進める日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS の活動をご支援いただけましたら幸いです。 日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 理事長 横尾紀彦 《2ページ》 2_活動報告 True Colors CARAVAN 2021年度まで東京を中心に展開してきた「True Colors Festival」のメッセージである「ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)」を全国に広げることを目的に、障害のあるパフォーマーらによる巡回型の事業「True Colors CARAVAN」を実施しました。鮮やかな黄色いスクールバスとともに全国7カ所を訪れ、訪問先では多様なアーティストや地域の方との交流やコラボレーションを行い、新たな出会いやつながりをつくりました。 《写真》 黄色いスクールバスを背景にした舞台上で6名のキャラバンパフォーマーズが正面を向き拳を突き出すポーズをとっている。 《写真、終わり》 企画制作|株式会社ダブリューアール(以下、WR) クリエイティブ・ディレクター|森下ひろき(WR) イベント・ディレクター|松本裕樹(WR) アクセシビリティ・ディレクター|西本宏樹(WR) PR|金瑞瑛(uknit) 広報|平原礼奈(Mazecoze研究所) プロジェクト・マネージャー|山小田安希(WR) アシスタント|谷本朋子(WR) 事務局|曽我部優香 協力|株式会社エフエム東京 鑑賞サポート リアルタイム字幕(日)|NHKグローバルメディアサービス 手話通訳(日)|武井誠(こころおと)、那須映里、瀧澤亜紀(フィード通訳)、名身連聴覚言語障害者情報文化センター、広島県ろうあ連盟、北海道ろうあ連盟、北海道手話通訳派遣センター石狩、大阪ろうあ会館、北九州市身体障害者福祉協会、大分県聴覚障害者協会 音声ガイド(日)|船本由佳、諏訪和美 ゆずりあいエリア|全会場に設置 多目的トイレ|全会場に既設 《3ページ》 CARAVAN Performers True Colors CARAVANの実施にあたり、オリジナルグループ「CARAVAN Performers」を結成。低身長症クランパーのリーダー・DAIKIさんを筆頭に、車椅子ダンサー・かんばらけんたさん、聴覚障害のあるストリートダンサー・かのけんさん、SOCIAL WORKEEERZ等、TCFの過去演目に出演経験のあるパフォーマーも多く参加しました。半年に及んだ公演実施期間中に、メンバーそれぞれのパフォーマーとしての心境や表現の変化も見られ、期間を通して成長し続けるグループとなりました。 《写真》 キャラバンパフォーマーズ7名が砂丘に立っている集合写真。それぞれに異なるデザインで、色は白やベージュで統一されている衣装姿。 Photo by Sachie Abiko 《写真、終わり》 演出・振付|DAIKI、伊豆牧子 音楽|村中真澄 衣装|中村実樹 パフォーマー|DAIKI、かんばらけんた、かのけん、Eri、テコエ勇聖、HARUKI、SOCIAL WORKEEERZ(NAGA、TOMOYA、ARISA、なかさん、YU-Ri、こーでぃー *各会場で1名が参加) DJ|徳永啓太 コラボステージ 《写真》 ワークショップの様子。Tシャツを着た参加者2人が向き合い、一方がポーズをとっている。 《写真、終わり》 CARAVAN Performersのダンスは「全国にD&Iの種をまく」をテーマに振付されています。各都市ではこのオリジナルダンスをもとに、地元の障害のある人たちなどをローカルゲストに迎えコラボレーションを実施。イベント前日には、ワークショップを通してパフォーマー同士の関係を深めながらリハーサルを実施し、各都市ならではの表現へとつなげていきました。 ゲストパフォーマンスステージ 《写真》 舞台の縁に座ってパフォーマンスをするダイキさんとゲストのゴメスさん。ゴメスさんはマイクを握って歌っている。 《写真、終わり》 全国規模で活躍する障害のあるゲストアーティストによるパフォーマンスステージも実施しました。高次脳機能障害のあるミュージシャンで画家のGOMAさん、知的障害のある人たちを含めたアーティスト集団「音遊びの会」、自閉症とともに生きるラッパーGOMESSさんなど、過去のTCFでは参加されていなかった表現者との新たな出会いの場になりました。 アクセシビリティ 《写真》 ステージで手話するかのけんさんと、音声に訳す手話通訳者。それを見守るテコエ勇聖さん。 《写真、終わり》 アクセシビリティには、手話通訳、リアルタイム字幕、音声ガイド、ゆずりあいエリアなどを用意しました。各会場で、フィードバックを重ねてインクルーシブな鑑賞体験の質の向上を図り、サポートを必要とする方以外の来場者にも鑑賞サポートの存在を伝える機会となりました。 《4ページ》 《写真》 客席から見たイベントの様子。ステージで踊るキャラバンパフォーマーズと、拍手の手話で応える観客たち。 《写真、終わり》 実施イベント一覧 2022年の春から秋にかけて全国7カ所を巡回し、多くの人の目に触れる大型商業施設や駅ビルなどの屋外イベントスペースを会場に、入場無料、申込不要でステージを展開しました。 True Colors CARAVAN in Tokyo(出発式) 開催日|2022年4月21日(木) 開催場所|恵比寿ガーデンプレイス センター広場(東京都渋谷区) 出演|〈オープニングパフォーマンス〉後藤仁美、CARAVAN Performers 〈オープニングトーク〉総合司会|乙武洋匡、ryuchell(以上、TCFアンバサダー) 〈パフォーマンストーク〉乙武洋匡、ryuchell、後藤仁美、CARAVAN Performers、伊豆牧子 〈「SOCIAL LOCKS!」課外授業〉こもり校長(小森隼)、ぺえ教頭(ぺえ)、渋谷龍太 (SUPER BEAVER)、ハナエモンスター、ナオ・オブ・ナオ(以上、豆柴の大群) 〈コラボセッション〉後藤仁美、ryuchell、CARAVAN Performers 来場者数|80名 True Colors CARAVAN in Nagoya 開催日|2022年5月28日(土) 開催場所|アスナル金山 明日なる!広場(愛知県名古屋市中区) ワークショップ会場|北名古屋市健康ドーム 軽運動室 出演|〈パフォーマンス〉CARAVAN Performers ローカルゲスト|JOY☆UP、Nami、TOMO、masae.、クマPOO、堀田聖奈 ゲストアーティスト|GOMA、辻コースケ 〈「SOCIAL LOCKS!」課外授業〉こもり校長、ぺえ教頭、須田亜香里(SKE48)、GOMA 司会|黒江美咲(FM AICHI) 来場者数|1,200名 True Colors CARAVAN in Hiroshima 開催日|2022年6月19日(日) 開催場所|アリスガーデン(広島県西新天地公共広場)(広島県広島市中区) ワークショップ会場|学校法人広島YMCA学園 広島YMCA国際文化センター コンベンション 出演|〈パフォーマンス〉CARAVAN Performers ローカルゲスト|I4P、TOMOE、松本あやめ ゲストアーティスト|大前光市 〈「SOCIAL LOCKS!」課外授業〉ぺえ教頭、とーやま委員(遠山大輔)、景井ひな 大前光市、メグリンチョ(リスナー生徒) 司会|大窪シゲキ(広島FM) 来場者数|1,400名 True Colors CARAVAN in Sapporo 開催日|2022年7月17日(日) 開催場所|札幌市北3条広場(アカプラ)(北海道札幌市中央区) ワークショップ会場|かでる2・7 レクリエーション研修室 出演|〈パフォーマンス〉CARAVAN Performers ローカルゲスト|SE-YA、yu-ta 、TapkaR、grow↑、齋藤愛、ゆりな、玉田桜 ゲストアーティスト|田川ヒロアキ 〈「SOCIAL LOCKS!」課外授業〉ぺえ教頭、とーやま委員、山之内すず、田川ヒロアキ 司会|森本優(エフエム北海道) 来場者数|570名 《5ページ》 True Colors CARAVAN in Osaka 開催日|2022年8月14日(日) 開催場所|グランフロント大阪 うめきた広場 メインスペース(大阪府大阪市北区) ワークショップ会場|福島区民センター 1階ホール 出演|〈パフォーマンス〉CARAVAN Performers ローカルゲスト|SO-MA from Child Dancer、YASU、Mikuri、宮﨑佳恋、阪本ひなた (FIPSTA)、こはる(FIPSTA) ゲストアーティスト|音遊びの会 〈「SOCIAL LOCKS!」課外授業〉こもり校長、ぺえ教頭、小原ブラス、音遊びの会 司会|赤松悠実(エフエム大阪) 来場者数|1,600名 True Colors CARAVAN in Kitakyushu 開催日|2022年9月11日(日) 開催場所|THE OUTLETS KITAKYUSHU アクティベーションフィールド (福岡県北九州市八幡東区) ワークショップ会場|若松市民会館 大ホール 出演|〈パフォーマンス〉CARAVAN Performers ローカルゲスト|イマ☆タカ(今村貴子)、イマ☆タカ Dance Family ゲストアーティスト|GOMESS 〈「SOCIAL LOCKS!」課外授業〉ぺえ教頭、とーやま委員、よしあき、GOMESS 司会|愛智望美(エフエム福岡) TCF応援サポーター|難聴うさぎ 来場者数|1,800名 True Colors CARAVAN in Beppu 開催日|2022年10月23日(日) 開催場所|別府市役所 中庭「市民ひろば」(大分県別府市) ワークショップ会場|別府市役所 大会議室 協力|おおいた障がい者芸術文化支援センター、別府市旅館ホテル組合連合会、BEPPU PROJECT、立命館アジア太平洋大学 後援|大分県、別府市 出演|〈オープニングトーク〉乙武洋匡、長野恭紘(別府市長)、尾形武寿(日本財団理事長) 〈パフォーマンス〉CARAVAN Performers ローカルゲスト|レッツダンスでガッツ元気の会 ゲストアーティスト|穴澤雄介 〈「SOCIAL LOCKS! 」課外授業〉ぺえ教頭、とーやま委員、向井太一、乙武洋匡 穴澤雄介、ミステリアスなクレープソルジャー(リスナー生徒) 司会|荒金由希子(エフエム大分) 来場者数|1,300名 《写真》 舞台上でカラフルなTシャツを着たローカルゲストたち。両手を胸の前で合わせるポーズをとっている。 《写真、終わり》 レッツダンスでガッツ元気の会の皆さんのステージ(別府) 《写真》 雨の中パフォーマンスするキャラバンパフォーマーズと、ギターを演奏する田川ヒロアキさん。 《写真、終わり》 大雨の中実施した田川ヒロアキさんとのコラボステージ(札幌) 《写真》 ダンスバトルでジャンプするダイキさんと両手両足を大きくひろげるクマプーさん。 《写真、終わり》 DAIKIさんとクマPOOさんとのダンスバトル(名古屋) 《写真》 舞台袖で子どもの観客に向かって両手でサムズアップするかんばらけんたさん。 《写真、終わり》 障害のあるなし、年齢など多様な観客が集まった(別府) 《6ページ》 SOCIAL LOCKS! 「SCHOOL OF LOCK!」(以下、SOL)はTOKYO FMをキー局に、JFN系38局で平日夜22時から放送される10代向けのラジオ番組です。 True Colors CARAVANでは若年層にもD&Iへの共感を広げるために同番組とタイアップし、毎週月曜に6分間枠で年齢・性・障害などの「違い」に着目した「SOCIAL LOCKS!」の提供を行いました。全国約45万人の視聴者枠(JFN各局ラジオ聴取率調査、2022年10月)で、48週にわたって放送を実施。寄せられたメッセージは350件を超え、うち45件のメッセージが番組内で紹介されました。毎週の放送はWEB記事媒体「TOKYO FM+」でも配信され、テキスト形式でも読むことができます。また、True Colors CARAVANでは「SOCIAL LOCKS!」課外授業と称して、会場でトークステージを実施しました。 《写真》 イベント会場でのSOLのパーソナリティと観客100人以上の集合写真。中央ではパーソナリティがSOLのフラッグを掲げている。 《写真、終わり》 タイアップ期間|2021年12月6日(月)から 2022年10月31日(月) タイアップ場所|「SCHOOL OF LOCK!」内(TOKYO FM / JFN系38局) 出演|こもり校長(小森隼)、ぺえ教頭(ぺえ) 《7ページ》 「SOCIAL LOCKS!」課外授業 《写真》 トークステージでディジュリドゥを披露するゴマさんと、それを見る他の出演者たち。 《写真、終わり》 SOL番組パーソナリティのこもり校長、ぺえ教頭、とーやま委員(遠山大輔)に加え、ゲストにタレントや障害のあるアーティストらが登壇し、地元放送局のアナウンサーを司会進行役にそれぞれが考えるダイバーシティや違いについて語りました。広島と別府の会場では、番組にメッセージを送ってくれた地元リスナーが登壇する場面もありました。 「SOCIAL LOCKS!」スペシャル 《写真》 TOKYO FMのスタジオ。こもり校長、ぺえ教頭、りゅうちぇるさん、ダイキさんが机を囲んで番組収録をしている。 《写真、終わり》 11月には「SOCIAL LOCKS!」終了後、SOLにて特別番組「SOCIAL LOCKS!スペシャル」を放送しました。TCFアンバサダーのryuchellさん、CARAVAN PerformersリーダーのDAIKIさんをゲストに、これまでのお便りやTrue Colors CARAVANでの経験などを紹介。過去に届けられたメッセージをきっかけにして変わったというアンサーメッセージもあり、すぐに行動に移して環境や見方を変えていく10代リスナーのエネルギーを感じる放送になりました。 Voice ペンネーム「RUBYマシンガン」(14歳、青森県) “普段何気なく生活している中でも困っている人がいると、正直はじめて知りました。僕達が普通に過ごしていても、その環境が嫌だと思う人もいるし、僕達にとって普通だと思っていることが普通じゃないことだってあるんだと知りました。” Voice ペンネーム「いちごタピオカ」(15歳、埼玉県) “視覚障害者の中でもいろんな見え方の人がいます。全く見えない人もいれば、光に弱い人もいれば、文字が見えにくい人もいる。本当にいろいろです。どんな見え方の人でも後ろ指を刺されずに過ごせる世界になってほしいです。これからも視覚障害の理解が進みますように。” *SOLリスナーから番組に送られたメッセージより、一部抜粋 アンケート集計 True Colors CARAVAN来場者へのアンケートでは430件の回答があり、うち障害福祉、多文化共生、ジェンター・セクシュアリティ、障害者アートなどの話題にはもともと関心がなかったと回答した方々が、全体の29%を占めました。一方で、イベント鑑賞後には「様々な背景のある人をこれまで以上に身近に感じた」(159件)「他の人にもこのイベントについて勧めたいと思った」(85件)「ダイバーシティやインクルージョンについてもっと知りたいと思った」(68件)など、来場前の興味・関心に関わらず、約半数の方のD&Iに対する気持ちに前向きな変化がみられています。 《写真》 イベント会場でTCFTシャツを着たスタッフが観客からアンケートを回収する様子。 《写真、終わり》 《8ページ》 True Colors Festival in アゼルバイジャン 日本とアゼルバイジャンの国交樹立30周年を迎えた2022年。フレンドシップ・イヤーを記念するイベントとして、首都・バクーで「True Colors Festival in アゼルバイジャン」を開催しました。日本とアゼルバイジャンからそれぞれアーティストが参加し、日本のアニメソングやアゼルバイジャンの伝統舞踊、ポップミュージックなども含む多彩なステージが繰り広げられました。障害のあるアーティストが舞台に立つ機会がまだ少ないと言われるアゼルバイジャンですが、「障害」ということを特別視することなく、音楽やダンスを純粋に楽しむ観客の姿が印象的でした。コロナ禍の揺れ動く状況を乗り越えて日本から渡航したメンバーたちにとっても、国際的な舞台への出演やアゼルバイジャンの人々との交流は、大きな刺激になったようです。 《写真》 イベント中の様子。ステージ上に出演者が勢揃いし拍手をしている。ステージ下には民族衣装の男女。女性は片手を挙げながら踊り、男性は手を叩いて拍子をとっている。 《写真、終わり》 開催日|2022年6月24日(金)から25日(土) 開催場所|バクー海岸公園(アゼルバイジャン共和国 バクー市) 料金|無料 鑑賞サポート|字幕(一部、アゼルバイジャン)、手話通訳(アゼルバイジャン)、車椅子スペース 演出|ニジャット・カシモフ 出演|穴澤雄介、川崎昭仁、ギュルナル・ハミドヴァ、サミル・アリエヴ サビナ・アスケロヴァ、ショリャ & サヂグ・ハサノヴ、DanceAbility Azerbaijan 富田安紀子、ヌルラン・アフメドヴ、ハリグ・シャリフォヴ、東野寛子 ファティマ・アクベルリ、ファルガン・アリフォグル フィダン・アレクベロヴァ & エミン・イスマイロヴ、メフマン・チンギゾグル MORIKO JAPAN(森仁志)+Ryoma Suzuki、ヤセル・アジゾヴ 司会|ダヤナット・マッマトヴゥ、サビナ・ママドヴァ 現地制作|アゼルバイジャン アビリンピック連盟 協力|在アゼルバイジャン日本大使館 来場者数|約8,000名 《9ページ》 Voice 川崎昭仁(出演者/ギタリスト) “ボクにとって初めての海外公演となったTrue Colors Festival inアゼルバイジャン。日本から約18時間のフライトを経て、1週間ほど滞在しました。現地のバリアフリーは日本ほど整備されていなかったけど、「困ってる人を助ける」という当たり前の心と行動力のお陰で快適に過ごせました。イベント本番を迎えるまでは習慣や価値観の違いでいろんな不安がありました。でも、たくさんの人が集まり、異国の見知らぬボクらに大きな歓声と拍手を送ってくれました。年齢も性別も国籍も障害の有無も関係なく音楽で一つになった瞬間を体感した気がします。” Voice 東野寛子(出演者/ミュージカル女優) “言語や文化などのバックグラウンドの違いやそれぞれの身体の特徴の壁を越えて、DanceAbility Azerbaijanとのパフォーマンスを何の不安もなく純粋に楽しめたのは、異国から来た私を昔からの仲間のように受け入れてくれた彼らのあたたかい心とパフォーマンスに対する情熱があったからだと思います。私の創作意欲を掻き立て、「Diversity & Inclusion とはこういう事だ!」と心から思える貴重な経験でした。” SNSでレポート! 旅する感覚で楽しむTCF 本イベントが開催された6月は帰国時の入国規制などもあり、まだまだ気軽に海外へ出かけるのは難しい時期でした。そこで、車椅子インフルエンサーの中嶋涼子さんがTCFのTwitterチームとともにバクーの街の魅力をSNSで発信しました。ライブ配信も行い、日本の方々にも現場の熱量を臨場感たっぷりに伝えることができました。 《写真》 夜の野外ステージ。紫色の照明に照らされたパフォーマーたちと、ステージを取り囲む大勢の観客の様子。 《写真、終わり》 アゼルバイジャンの伝統舞踊やポップソングをはじめ、ダンス、音楽、大道芸などが入り混じった多彩なステージ。 《写真》 日本から参加した7名のアーティストの集合写真。背景の画面にはTCFのロゴが大きく映し出されている。 《写真、終わり》 日本から参加したアーティストたち。 セッションや現地アーティストとのコラボレーションにも挑戦した。 《写真》 黒い衣装のダンサー2人組が踊っている。一人は車椅子、もう一人は膝立ちになり、お互いの手を合わせてポーズをとっている。 《写真、終わり》 ファティマ・アクベルリさんと東野寛子さんのコラボレーションによるダンス作品。 《写真》 白と赤の法被を羽織った川崎昭仁さんがギターを演奏している様子。背景には炎が燃え上がる映像が映し出されている。 《写真、終わり》 川崎昭仁さんのギター演奏。 《10ページ》 True Colors SPECIAL LIVE ~ 超いろとりどり! 音楽ライブ ~ 「ダイバーシティを体感する音楽ライブ」として、舞台上も客席も多様な人々が集い、楽しめることを目指したイベントを東京・渋谷で開催しました。多種多様な個性が光る障害のあるパフォーマーを中心に、知名度の高いアーティスト・タレントらも出演。音楽やダンス、トークを主軸に構成し、出演者同士のコラボレーションや歌を手話で表現する「手話パフォーマンス」などで会場を盛り上げました。 《写真》 NHKホールのステージの様子。出演者が並んで歌っているところに金色の紙吹雪が降っている。ステージ上には大きなアート作品と字幕付きモニターが設置されている。 《写真、終わり》 開催日|2022年9月22日(木) 開催場所|NHKホール(東京都渋谷区) 料金|無料 鑑賞サポート|字幕(日)、手話通訳(日)、車椅子席、補助犬利用者席、ボディソニック(協賛:パイオニア株式会社)、多目的トイレ、サポートスタッフ、最寄駅からのアクセス情報 出演|穴澤雄介、井上芳雄、ILL-Abilities(イルアビリティーズ)、川崎昭仁 紀平凱成、CARAVAN Performers、平原綾香、MORIKO JAPAN(森仁志) Little Glee Monster、わたなべちひろ トークゲスト|ryuchell 手話パフォーマー|Kuniy、RIMI 司会|ウエンツ瑛士、LiLiCo 手話通訳|麻生かおり、武井誠 TCF応援サポーター|猪狩ともか、難聴うさぎ 美術提供|テネシー・ラブレス 企画制作|株式会社NHKエンタープライズ 来場者数|1,978名(うち、鑑賞サポート席利用32名) 《11ページ》 Voice 来場者の感想より抜粋 “目当ての歌手の歌唱はもちろん、初めてお目にかかるパフォーマーの方々も熱量がすごくて広がる可能性と音楽の楽しさを全身で浴びれた時間でした。” “なんとなく「多様性」がテーマだとは知っていたけど、想像を越えるパフォーマンスに度肝を抜かれた。思わず自分の在り方を見つめなおしてしまう贅沢な夜だった。あぁ、「生きてる」って感じ!!” “多様性を理解しているつもりでしたが色々と考える機会を頂けました。” “井上芳雄さんのパフォーマンスを情報保障付きで生で観られるなんて思ってもみなかったので、本当に胸がいっぱいになりました。” “今回初めて手話パフォーマーの方々を知りました。歌手の方と同じように歌っているように、感情も伝わって来ました。皆さんのパフォーマンスがともかく素晴らしかったです。” テレビ放映で楽しみ方が広がる True Colors SPECIAL LIVEは2022年11月12日(土)にNHK・Eテレで特別番組として放映され、ステージの様子に加えて、コラボステージの舞台裏や鑑賞サポートへの取組などについても紹介されました。 放映日にはTCF公式Twitterスペースにて同時視聴の音声配信企画も実施。出演アーティストも参加し、副音声的に感想などを語り合いました。イベント会場だけでなく、様々なメディアで展開され、楽しみ方が広がっていったのも、SPECIAL LIVEの特徴と言えます。 《写真》 グランドピアノを弾く紀平カイルさんと手を広げて笑顔で歌う井上芳雄さん。 《写真、終わり》 ピアニスト 紀平凱成さんとボーカリスト 井上芳雄さんによるコラボステージ。 《写真》 歌に合わせて拳を突き上げるリトグリとクニ―さん。わたなべちひろさんは座ってシンセサイザーを弾きながら歌っている。 《写真、終わり》 わたなべちひろさん、Little Glee Monster によるコラボステージ。 手話パフォーマーのKuniyさんも加わり、力強い楽曲の世界を表現した。 《写真》 イルアビリティーズの2人が片腕だけで体を支えるアクロバティックなポーズをとっている。 《写真、終わり》 TCF とも縁の深いILL-Abilities(イルアビリティーズ)も来日し、世界レベルのブレイキンやダンスバトルを披露した。 《写真》 ステージ上での前説の様子。猪狩ともかさん、難聴うさぎさん、手話通訳が両手を挙げて手話の拍手をしている。 《写真、終わり》 True Colors CHANNEL にも出演した猪狩ともかさんと難聴うさぎさんが「TCF 応援サポーター」としてSNS や前説でイベントを盛り上げた。 《写真》 白杖をもった来場者がロビーの階段をおりるところをサポートスタッフが誘導している様子。 《写真、終わり》 障害のある方々も多く来場した。 ロビーや客席のアテンドにはボランティアのサポートスタッフが活躍した。 《12ページ》 True Colors CHANNEL TCFでは2019年度の活動開始以来、SNS(Facebook、Instagram、Twitter、TikTok、YouTube)を活用し、主にプログラムの周知を行ってきました。今年度はYouTubeの中にダイバーシティについて考える番組「True Colors CHANNEL」を開設し、オンライン上の共感者を増やし、TCFやダイバーシティへの関心をさらに多くの方へ広げ、深めていくことを目指しました。番組では、MCの髙橋ひかるさんとナビゲーターが、障害や性、世代、言語、国籍など多様なゲストをお招きし、それぞれの方の貴重な体験やD&Iについて思うことなどを伺いました。アイドル、ユーチューバー、スポーツ選手、画家、落語家などパフォーミングアーツの領域を超えて幅広い分野で活躍される方が登場し、TCFの枠を広げる試みにもなりました。 《写真》 チャンネル第19回のサムネイル画像。キャッチコピー「視界が奪われてゆく進行性の難病」MC髙橋ひかる、ナビゲーター眞鍋かをり、ゲスト白杖ダンサー、モリコジャパンの名前と写真もカラフルにあしらわれている。 《写真、終わり》 開催日時|2022年5月から2023年3月 公開本数|24本 鑑賞サポート|字幕(日)、音声配信、文字起こしテキスト MC|髙橋ひかる、鶴嶋乃愛(#13,14) ナビゲーター|ユージ(#1,2,9,10,21-24)、鈴木おさむ(#3,4) 武井壮(#5,6)、須田亜香里(#7,8)、JOY(#11,12)、ヒャダイン(#13,14) パックン(#15,16)、LiLiCo(#17,18)、眞鍋かをり(#19,20) 企画制作|株式会社NHKエンタープライズ/株式会社Days 制作|株式会社UNITED PRODUCTION Voice 髙橋ひかる(True Colors CHANNEL MC) ゲストの方も、ナビゲーターの方も、自分におきたこと、感じたこと、どういうふうに世界や環境が変わったら生きやすいかを真摯に話してくださいました。そういう思いを持つ人たちが、一人ひとり増えることで、温かい世界ができると思います。私もその環境づくりのちょっとした役割を担えたらと思っています。この番組をご覧になる方、一緒につくったスタッフの皆さんだけでなく、私自身にも新しい発見や気づきをいただいて感謝しています。 《13ページ》 映像配信コンテンツ一覧 True Colors CHANNEL https://onl.bz/Cp8jCzb 以下、「タイトル」「ゲスト」「視聴回数」「総再生時間」の順に記載。 #1 車椅子でもアイドルを諦めない!! 猪狩ともか 16,407 1,864.6 #2 私にとって難聴は個性 難聴うさぎ 46,161 4,740.7 #3 「違い」って「エモい」! DAIKI 4,702 487.9  #4 わたし、レズビアンです 滝沢ななえ 31,023 3,327.2 #5 俺は病と“等価交換”で超人になった 関根シュレック秀樹 9,391 1,218.9 #6 自分で自分を愛して 桃果愛 4,212 366.5 #7 僕は、電車事故で手足3本を切断しました 山田千紘 70,425 7,479.6 #8 恋愛ナシ、性愛ナシで何が悪いの? 中村健(なかけん) 23,189 2,117.6 #9 正直、視覚障害だとバレたくない… 廣瀬悠・廣瀬順子 4,948 482.7 #10 わたし今、幸せです 西原さつき 81,231 6,182.0 #11 発達障害でも“まぁいっか” あつの裏夫妻 350,623 32,335.9 #12 “異彩”にリスペクトを 松田崇弥 5,961 704.5 #13 “成金障害者”と呼ばれて… 渋谷真子 22,866 2,454.8 #14 “目がおかしい”バカにされても障害認定なし…“グレー”の葛藤 義眼少女ぴぴる 14,736 1,235.3 #15 僕は吃音症で“良かった” ラッパー達磨 16,895 2,031.1 #16 違うからこそ、おもしろい かんばらけんた 2,806 249.9 #17 自分を責め続けた15年 あこち 20,078 1,544.0 #18 書けない思いを「描く」 濱口瑛士 31,848 3,381.1 #19 誰も“置き去りにしない”世界へ MORIKO JAPAN 4,840 373.4 #20 障害は“無味無臭” 柳家花緑 5,118 557.5 #21 U-N-I(You and I)~温かい世界へ~Katy Perry×Kyary Pamyu Pamyu ケイティ・ペリー、きゃりーぱみゅぱみゅ 3,574 193.1 #22 「True Colors Festival THE CONCERT 2022」舞台裏に潜入 ryuchell、難聴うさぎ、猪狩ともか ほか 1,619 92.1 #23 向き不向きより、前向き 葦原海 584 47.8 #24 TCFファミリー・スペシャル座談会 あつの裏、難聴うさぎ、あこち 310 30.7 2023年3月15日時点 以下のプラットフォームに、コンテンツを音声で配信しています。 Spotify https://onl.bz/m7kpd5r Amazon Music https://onl.bz/fkXnyES Google Podcasts https://onl.bz/YbE7trP Apple Podcasts https://onl.bz/5vmNxd3 《14ページ》 True Colors Festival 公式Twitter YouTubeに加えて、Twitterもこれまで以上に活用し、プログラムの情報発信のみならず、オンライン上でのつながりや共感者をうみだす仕組みづくりに挑戦しました。True Colors CARAVAN、True Colors Festival in アゼルバイジャン、True Colors SPECIAL LIVE、True Colors CHANNEL、THE CONCERT 2022といった今年度に実施したプログラムをTwitterがつなげ、横断的に情報発信することで、それぞれのプログラムがTCFというひとつの大きなうねりになることを目指しました。他にもクイズ、アンケート、プレゼントなどのフォロワー参加型企画を繰り返し実施し、日常を過ごす中でD&Iに触れ、考える機会を提供しました。 《写真》 ティーシーエフ公式ツイッターのプロフィール画面のキャプチャ画像。 《写真、終わり》 実施期間|2022年4月から 投稿回数|1,901回 企画制作|株式会社NHKエンタープライズ/株式会社Days 運営|株式会社NHKエンタープライズ フォロワー数|31,430 《15ページ》 #TCFファミリー TCFそれぞれのプログラムに参加していただいた方々を「#TCFファミリー」と位置付け、その出会いやつながりを広げていきました。それぞれの方の「ファミリーカード」を用意し、D&Iへのメッセージやサインをいただき、2023年2月末までに国内外の出演者60名以上の方からメッセージを届けることができました。 《写真》 ファミリーカードの画像。カードの左半分には黒い衣装・黒い逆円錐形の義足をつけたビクトリアモデスタさんの写真。右半分にはモデスタさんのプロフィールと直筆サイン。 《写真、終わり》 #1日TCF中の人 True Colors CHANNELに出演した、YouTuberの難聴うさぎさん、トランスジェンダーで活動家の西原さつきさん、車椅子ユーザーでアイドルの猪狩ともかさんの3名に、TCF公式Twitterアカウントの「中の人」を務めていただく「#1日TCF中の人」企画を実施しました。投稿では日本語字幕のついた日本映画や車椅子ルートのある寺社などの存在が、それぞれの日常の延長線上で紹介され、エンゲージメントの高い企画となりました。 《写真》 「中の人」として難聴うさぎさんが日本語字幕付きの映画の紹介について投稿したツイッター記事のキャプチャ。文章の下には映画ポスターの前でポーズをとる難聴うさぎさん。 《写真、終わり》 開催中の演目を即時的、多角的に紹介 大雨となった True Colors CARAVAN in Sapporo では「会場に来られない人にもステージを見てもらいたい」と、Twitterでライブ配信を実施。これが好評だったことを受けて、その後の大阪、北九州、別府会場でもライブ配信を継続し、合計で14,179名の方にオンラインでステージを視聴いただくことができました。また、北九州には、移動中のCARAVAN Performersに同行し、車椅子ユーザーのかんばらけんたさんや徳永啓太さんとともに、空港や飛行機のアクセシビリティの現場などをレポートしました。 《写真》 車椅子のかんばらけんたさんと徳永啓太さんが移動途中の空港カウンターで手続きをしている様子。 《写真、終わり》 Voice 佐藤順哉(Twitterチーム、NHKエンタープライズ) “TCFのTwitterをやっていく上で、意識していたのは「ライブ感」でした。難聴うさぎさんやCARAVAN Performersに密着する中で、電車に乗るときに改札が混んでいると障害者手帳を見せるのを諦めてしまうとか、車椅子利用者が飛行機に乗ろうとすると、窓口ごとに同じやりとりが何回も発生してとんでもなく時間がかかるとか…「障害者は電車運賃が割引になる」「車椅子でも飛行機に乗れる」というネットで調べれば分かる情報をツイートするのは簡単ですが、実際はどうなのか、現状はどうなっているのかまでお伝えできるのは、実際に自分たちも体験して初めて分かることでした。” 《16ページ》 3_座談会 3人のプロデューサーと2022年度を振り返る True Colors Festiva(以下、TCF)は、日本財団が2006年からアジア各国で実施してきた障害者国際芸術祭を継承する形で、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、オリパラ)の開催にあわせて、さまざまな活動を行いました。コロナ禍で予定していた公演が中止・延期になるなど想定外のこともありましたが、結果的にはオリパラ後もTCFを続けることとなり、大会の重要なビジョンであった「多様性と調和」への関心の高まりを日常につなぐ役割の一端を担えたのではないかと考えています。TCFをそれぞれの立場から支えた3人のプロデューサーと2022年度の取組を振り返り、ここから生まれたものをどう次につなげていくかについて語り合いました。 《写真》 森真理子さんのプロフィール写真。イベントでマイクを持って話している様子。 《写真、終わり》 森 真理子 元TCFフェスティバル・プロデューサー/厚生労働省障害者文化芸術計画推進官 愛知県生まれ。美術館等での勤務を経て、京都造形芸術大学舞台芸術研究センターにて舞台制作を行う。2007年よりフリーランスで演劇・ダンス・音楽・美術の企画制作・プロデュースを担うようになり、2009年から「まいづるRB」ディレクターとして福祉や教育等、地域と連携した事業を実施。「六本木アートナイト2014」「さいたまトリエンナーレ2016」等のプログラム・ディレクターを務め、2017年より日本財団 DIVERSITY IN THE ARTSに勤務し、TCFの立ち上げ当初から2022年5月まで、フェスティバル・プロデューサーとしてプログラムの企画や全体統括を行う。2022年6月より現職。 《写真》 森下ひろきさんのプロフィール写真。イベントの舞台裏でスタッフと資料の確認をしている様子。 《写真、終わり》 森下 ひろき True Colors CARAVANクリエイティブ・ディレクター/株式会社ダブリューアール プロデューサー 大阪府生まれ。広告業界において、主にクリエイティブ領域とプロモーション領域で活動している。“人が動くところまでをデザインする”を信条に、コミュニケーションをデザイン。国際的なスポーツ大会、飲料メーカー、音響機器メーカー、行政などの、幅広いプロジェクトをプロデュース。また、カフェ・ギャラリー「neji」、Webメディア「MARZEL」の運営も手掛け、東京と大阪を中心に全国で活動中。2021年の True Colors CIRCUSで運営を担当。True Colors CARAVAN の企画・運営を手掛け、True Colors THE CONCERT 2022ではアクセシビリティと広報に携わった。 《写真》 河瀬大作さんのプロフィール写真。黒縁の眼鏡をかけて正面を向いている。 《写真、終わり》 河瀬 大作 True Colors CHANNEL、TCF公式Twitter企画/株式会社Days プロデューサー 愛知県生まれ。NHKで「クローズアップ現代」「プロフェッショナル 仕事の流儀」「あさイチ」などさまざまな人気番組を製作した後、2022年に独立。その後も、「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「ズームバック×オチアイ」、「おやすみ日本 眠いいね!」などNHKの番組を手がけながら、ジャンルを横断して行政や企業などのプロジェクトに携わる。被災地の復興を考える(社)FUKKO DESIGN代表理事、日本にデザインミュージアムを作る(社)Design-DESIGN MUSEUM 理事。TCFでは2022年から True Colors CHANNEL とTCF公式Twitterの企画運営に携わる。 《写真》 大塚千枝さんのプロフィール写真。マイクを持って笑顔で話をしている様子。 《写真、終わり》 聞き手|大塚 千枝 日本財団 DIVERSITY IN THE ARTSパフォーミングアーツ事業部長 鳥取県生まれ。大学院(文化人類学)修了後、国際機関、米国の大学機関等での勤務を経て、2004年度文化庁新進芸術家在外研修制度によりニューヨーク・ジャパンソサエティ舞台公演部でアートマネジメントを学ぶ。帰国後は、大学、アートNPO、文化団体などが運営する日本各地の劇場や、国内外で多様な舞台芸術分野の事業に制作者として関わり、文化芸術を通じた地域振興、国際交流、教育活動などにも携わってきた。2017年から厚生労働省にて障害者芸術文化活動支援専門官・障害者文化芸術計画推進官を務め、2022年6月より現職。 《17ページ》 TCFに関わった人たちに、大きな経験やノウハウ、哲学を残すことができた 大塚 2022年度の活動を振り返るにあたり、TCFが当初は何をめざしていて、コロナ禍を受けてどんな変遷を辿ってきたのかを教えていただけますか? 森 2020年2月に開催した True Colors MUSICAL『ホンク!~みにくいアヒルの子~』までは順調に進んでいて、勢いがあったと記憶しています。でも、コロナ禍でその後予定していた8つのプログラムはすべて中止・延期になりました。あのまま進んでいたらどうなっていたか想像できませんが、オリパラの機運の中で「2020年夏」までイベントに追われている気持ちもあって、「ちょっと冷静になって」と冷水をかけられたような気がしました。本当に大事にしたいのは何なのかと振り返る時間を、私たち含めて社会全体が持つことになった。それは大事な時間だったのではないかと思います。 《写真》 実施事業の記録写真。舞台上に3名の登壇者が並んでいる。登壇者の間にはアクリル板が設置されている。 《写真、終わり》 コロナ禍で企画されたTrue Colors FILM FESTIVAL2020オープニングイベント。 会場は無観客でライブ配信を実施した 大塚 森さんがTCFを始めた2019年当時目標にしていたもの、見たいと思っていた風景はどんなものでしたか? 森 TCFというプロジェクトは関わった人の経験として残っていくものだと捉えていたので、2020年の終着点であるコンサートのタイミングで、パフォーマー、プロデューサー、制作スタッフ、みんなで集まって、経験したことや感じたことを共有する場をつくりたいと考えていました。 日本財団やフェスティバルの資金とネットワークを生かして、それぞれのノウハウや考え方が交わり、関係性が深まって、次の展開につながっていく。個々のプログラムというより、そうした風景が生まれることを楽しみにしていました。 大塚 手応えはいかがですか? 森 観客への情報保障にしても、舞台上の演者への配慮にしても、ひとつのあり方を示すことはできたのかなと思います。もちろん「これが正解」というものではなく、外から批評されるべきことではありますが、少なくとも参考にできる一例をつくることはできました。 また、コロナ禍の影響などもあってさきほど話した共有の場を最後に開くことはできませんでしたが、関係者に様々な影響を与えたことは間違いないと思います。2019年度のTCF事務局を担当したprecogが「THEATRE for ALL(*鑑賞サポートを備えたオンライン動画配信プラットフォーム)」を立ち上げたこともTCFの経験があったからではないでしょうか。落合陽一さんのように新しい視点を持った方に参加していただくこともできました。河瀨さんや森下さんもそうですね。みなさんの考え方や今後の活動に少なからず影響を及ぼしていると思うので、そうした関わった人たちへの波及力が実感のある手応えです。 《写真》 座談会で話している森真理子さん 《写真、終わり》 森真理子さん みんな地元が好きだし、地元の人の活躍が見たい 大塚 そうした流れを引き継ぎながら、2022年度には True Colors CARAVAN など新たな挑戦も始まりました。 森下 僕は2021年4月に True Colors CIRCUS の運営に関わっていて、その現場で(コロナ禍により、2021年度にTCFの集大成として開催される予定だった)コンサートが再度一年延期されることを知ったんです。じゃあその間何をするのか聞いたら、全く白紙の状態だという。期間が長く空いてしまったらこれまで積み上げてきたものが消えてしまうから、「1本企画を書いてみていいですか」と相談し、2週間ほどでCARAVANの企画を練って提案しました。 大塚 全国を巡ることにしたのはなぜですか? 森下 TCFとして、コンサートに向けてファンをつくる必要がありました。オンラインで配信するという話も出ていたから、それなら東京だけではなく全国各地にTCFのファンをつくりたいと思ったんです。 大塚 森下さんは、CARAVANでめざしていたものはありますか? 森下 コロナ禍以前のTCFでは、一つひとつのプログラムがDANCEやMUSICALやFASHIONなど異なる切り口を持ちながら、並べて見たときにTCFという大きな枠組みが見えてくるように、トンマナを揃えてつくられていたという印象を受けています。でも、CARAVANでは、あえてそこはめざしませんでした。《18ページ》新しく尖った切り口を打ち出すのではなく、“これまでのど真ん中”を東京以外に持っていく。しかも、7割ほどの仕上がりで持っていって、地元の人と一緒につくりあげる、ということをやってみたかったんです。 《写真》 実施事業の記録写真。キャラバン関係者が12分割に並んだズームキャプチャ画像 《写真、終わり》 True Colors CARAVANの関係者が集まり、オンラインで実施した振り返り会の様子 大塚 各会場では、ローカルメディアからも多数取材されましたね。 森下 「ダイバーシティ?インクルージョン?東京の話だよね」ではなく、「これうちの街じゃん、うちらに関係あることじゃん」と思ってほしかったんです。中央からの発信と地元からの発信をクロスさせて、身近に感じてもらいたかった。だから、地元メディアに取材に来てもらえるよう必死でプロモートしました。最初は「テレビに出ているあの有名人がこの街にやってくる」という点にメディアは興味を持つのかと思っていましたが、一番質問されたのは「地元からは誰が出演するんですか」ということでした。みんな地元が好きだし、地元の人が活躍する姿を見たいんですね。 大塚 CARAVANを通して、全国各地で活動している人がこんなにもいるんだという発見がありました。もっとみなさんと一緒に活動できるといいですね。 森下 出演してくれた方々も、「うちの子がステージに上がるなんて初めてです」「参加できてよかった」と喜んでくれました。でも、終わってから振り返ると、ステージを観ていた人が参加できる仕組み、関わりが継続していく仕組みをもっと設計するべきだったと思っています。 CARAVANのダンスを子どもたちが踊って動画にアップしたり、学校の授業に取り入れられたり、そんな風に広がっていく仕組みをもっとたくさん用意しておけばよかった。それがひとつの反省点であり、次への希望です。 《写真》 実施事業の記録写真。イベント会場で取材をする高校生。制服姿で「新聞部」の腕章をつけて、カメラを首から下げている。 《写真、終わり》 地元高校の新聞部から取材を受ける場面もあった(True Colors CARAVAN in Hiroshima) ぶつかり合った分、お互いを理解することができた 大塚 CARAVANを進めるなかで苦労したことはありますか? 森下 障害のある人たちと深く関わることが初めてだったので、そこはむちゃくちゃ苦労しました。PDFをメールで送っても読めない人がいたり、リハーサルの会場へ向かう際に歩く歩幅を意識したり、ホテルから会場までの車椅子のアクセスが難しかったり。これまで僕の中にあった常識がまったく通用しないんだと気づかされました。 また、地元のパフォーマーの出演調整にも難儀しました。どの都市にも近いテーマで活動している人はいるだろうと思っていたのですが、探すのは意外と時間がかかりましたし、前日に会場まで来てもらって一緒に体を動かして心を通わせて、翌日ステージに立つということがこんなにも大変なのか、と驚きました。公共交通機関がなく車での長時間移動が身体的に難しかったり、横になれる場所が必要だったり。最初はうまく対応できない場面もありましたが、少しずつチームに知見がたまっていき、だんだん円滑に進行できるようになりました。それはすごく難しくて、ためになる経験でしたね。 海外の人と話すと、自分とは違った文化や価値観、生活様式を知ることができて刺激を受けますよね。そんなふうに、「俺はこうだけど、君はそうなんだね」と発見できる機会が身近にあるんだなと思いました。 《写真》 実施事業の記録写真。ワークショップ参加者4名が背中合わせで座り、腕を組んでいる。その様子を見守るスタッフや他の参加者。 《写真、終わり》 イベント前日に実施した地元のパフォーマーとのワークショップの様子 (True Colors CARAVAN in Kitakyushu) 《写真》 実施事業の記録写真。オレンジ、赤、緑、紫、青などのカラフルなシャツを着たダンサー6名が舞台上で踊っている。 《写真、終わり》 地元で活動するダンスチームによるパフォーマンスステージ (「I4P」、True Colors CARAVAN in Hiroshima) 大塚 同じメンバーで全国7箇所を巡るとなると、チームワークが重要だったのではないかと思います。《19ページ》結束力を高めるために心がけたことはありますか? 森下 ダンスのジャンルも障害の内容もいろんなことがバラバラのパフォーマーをひとつのチームにしたので、今だから言えることですが、最初は本当にたくさん衝突しました。 これが1回だけのプロジェクトだったら、お互いに不満を飲み込んで衝突を避けていたと思います。でも長期に渡るプロジェクトだから、自分のこともちゃんと伝えて、相手のことも理解して受け入れないとうまくいきません。たとえば、低身長症のDAIKIは歩幅が違うからカウントで合わせて動いてもみんなとずれてしまうし、DJの啓太は上半身に麻痺があるからきっかけを出されてもほんの少し遅れてしまう。演出チームはプロとして当然高いレベルを要求するし、パフォーマーもそれに応えようとします。でも、それぞれの状況で難しいこともあるんです。そうしたことに気づくには時間が必要でした。 聴覚に障害のあるかのけんも最初はうまくコミュニケーションを取れているように見えていたけど、実は演出チームの指示が半分しか聞き取れていなかったことが途中でわかって驚きました。ただ、そういうときにほかのメンバーが「演出チームや運営チームが配慮するのも大事だけど、僕らが自分から伝えるのも大事だよ、対等なコミュニケーションなんだから」と言ってくれる場面もあって。お互いが一歩踏み込んで深くコミュニケーションを取ってくれていたから、それを間近で見ていた僕たちスタッフもメンバーのことを理解したり、伝えるべきことをちゃんと伝えたりできるようになりました。 バチバチとぶつかりあった分、お互いを理解して仲良くなれたんだと思います。今でも、CARAVANチームのLINEグループでお互いに近況報告し合っています。 《写真》 実施事業の記録写真。舞台袖からステージを見守るキャラバンパフォーマーズとスタッフ 《写真、終わり》 メンバーのステージを見守るCARAVAN Performers (True Colors CARAVAN in Kitakyushu) ソーシャルメディアを活用し、関係性を深めていく 大塚 2022年度の活動の特徴として、TCF公式Twitterや True Colors CHANNEL によってオンラインでもTCFを盛り上げたことも大きいと思います。河瀨さんはどんなことを考えながらTwitterとCHANNELに取り組んできたのでしょうか。 河瀬 パフォーマンスのすごさは身体的に現場でステージを浴びることにあって、その体験は何にも代えがたいと思っています。冷めた目で見ていたのに、リアルにバイブスを感じると自然と心と体が動いてしまう、ということがありますよね。そうした体験を積み重ねてきたのがTCFだと捉えていて、僕がそこに対して何かお手伝いできることがあるとしたら、「つなぐ」ことなんだろうなと思いました。 どんなにすばらしい体験でも時間が経つと少しずつその作用は薄れてしまうものだから、一つひとつをつなぎとめて、点を線に、線を面にする。SNSというのはプロジェクトの本質をわかっていないと運用できないし、CARAVANのみなさんのことを知らないとツイートできません。「ダイバーシティとは何なのか」が見えるようにYouTubeに True Colors CHANNEL をつくり、パフォーマーやスタッフを物理的につなげていくこと、人の輪を広げていくことを意識しながら公式Twitterを運用していました。 《写真》 座談会にオンラインで参加した河瀬さんが映るモニター。 《写真、終わり》 河瀨さんはオンラインでの参加でした 大塚 共感者を増やすために大事にしていたことはありますか? 河瀬 一般の人は、SNSというものは片手間にやるものだと考えています。でも、それで食べているインフルエンサーたちは、「コンテンツをつくる」という意識を持って全力で取り組んでいます。僕は、SNSの運営は、特別なものではなく、「リアルな世界の人づきあい」と一緒だと思っています。SNSという手段を使い、TCFのファンとつながり関係性をつくる。そのために、同じ人を何度も登場させることを心がけていました。1回だと忘れてしまうかもしれないけど、3回登場すれば視聴者やフォロワーは親しみを持ってくれるし、僕らも仲を深めることができる。 1年取り組むなかで、土台ができてきたなと思います。乙武さんやryuchellさん、公演やCHANNELに出演してくれた方々、関係者とつながりを深め、みなさんが別のプロジェクトで活躍すると聞けば「応援しています!」「ありがとう!」とTwitterでコメントを交わし合い、「実はこういうことを考えていて」と相談すると「ぜひ一緒にやりたいです!」と言ってもらえる関係性をつくることができた。だから、一番大事 なことは、ここからどう次の展開につなげていくか、なのかもしれません。僕自身、TCFに限らずいろんなプロジェクトや番組に携わるときに、このつながりを活かしていけたらと思っています。 《20ページ》 《写真》 実施事業の記録写真。「公式ツイッターフォローしてね」と書かれたパネルを手にする猪狩ともかさん 《写真、終わり》 True Colors CHANNELに出演し、True Colors SPECIAL LIVE で応援サポーターを務めた猪狩ともかさん 大塚 近年、障害のある人の芸術文化活動については、行政による推進も高まっていますが、エンタメやマスメディアとの連携は行政が苦手とするところでもあります。そのなかで日本財団がそういった領域に関わる事業をすることは大きな意義があると思いますが、一方で「日本財団がやるからいいや」と思われてしまったら広がっていきません。そうではなく、TCFに関わった人がそのノウハウやつながりを別の場所で活かしてくれたら、もっと大きなムーヴメントになるはずです。だから、いまの河瀨さんの言葉はとてもうれしかったです。 森下 Twitterチームのみなさんは、毎日「おはようございます、今日もほどほどに頑張っていきましょう」といったツイートをされていますよね。CARAVANの間、それに反応して「ほどほどに頑張ります」とリプライしてくれる人が日に日に増えていくのを感じていました。つながりつづけることで、届けられるものがある。今回のプロジェクトに欠くことができないものだったなと思います。 河瀬 学校関係者の方から「True Colors CHANNEL のコンテンツを教材として使いたい」と連絡が来たり、CARAVANに出演してくれた人を僕たちが取材することで関係性が深まったり。CARAVANという地に足のついた活動があって、そこで出会った人たちとSNSを通してつながりつづけ、またCARAVANに返すことができたという手応えを感じています。 《写真》 実施事業の記録写真。出演者3名が座ってトークをしている。周りにはカメラマンやスタッフがいる。 《写真、終わり》 True Colors CHANNELの収録風景。この日のゲストはDAIKIさんでした TCFの蒔いた種が、あちこちで育っていくことを願って 大塚 最後に、みなさんがTCFの成果やダイバーシティ&インクルージョンの現在地をどう捉えているか、ご自身の今後の展望も含めて教えてください。 森下 ずっと当事者や当事者に近い人たちだけが声を上げてきたなかで、オリパラが契機となり、僕のような、障害のある人が身近にいるわけでも、福祉施設で働いた経験があるわけでもない素人がプロジェクトに携わる機会をいただきました。これまで障害に向き合ってこなかった人たちがいろんなプロジェクトに関わり、その先にいる生活者の心が動いて、少しずつ世の中が変わっていく。そうした積み重ねの先に、ダイバーシティ&インクルージョンという言葉も必要なくなる未来が待っているのではないでしょうか。 それにはどこかひとつの団体が頑張るだけではだめで、みんなが自走していくように巻き込んでいかないといけません。「あいつら何かおもしろいことしてるぞ、自分もやりたい」って。実際に、CARAVANに出演してくれた人たちがあれからテレビに出演しているところをよく目にします。それはもちろん大部分が彼ら自身の力によるものだけど、CARAVANに参加したことで世の中に見つけられた部分も多少あるんじゃないかな、と思っています。 突き抜けたプロジェクトをひとつ打ち上げて満足するんじゃなくて、じわじわと全体が底上げされていくように動いていきたいですね。 《写真》 座談会で笑顔で話す森下ひろきさん 《写真、終わり》 森下ひろきさん 《写真》 実施事業の記録写真。キャラバン名古屋の会場風景。屋外ステージを客席や階段の上から多く人が見ている。 《写真、終わり》 《21ページ》 森 TCFが発足した2019年頃は、なんとなく生きづらさを感じている人たちにいろんな考え方があることを伝えたり、自分とは違う人とどう折り合いをつけてやっていくかを一緒に考えたり、そういうことを意識していました。 今もそれは変わりませんが、最近「そもそもなぜわざわざ、違う人同士一緒に何かに取り組む必要があるんだろう、それを舞台上で再現する必要があるんだろう」と考えたことがありました。でも、障害であれ人種であれ何であれ、自分とは違う他者を知ること、自分が知らない価値観や物語を知ることには根源的な喜びがあると思います。ひとつのこと、自分の周囲のことだけを見ていたら、人間は自家中毒を起こしてしまって生きていけないのではないでしょうか。そのくらい根源的なことなのかな、と思っています。 《写真》 実施事業の記録写真。笑顔で肩を組む出演者たちの様子。 《写真、終わり》 同じステージに立つCARAVAN Performers、MORIKO JAPAN、ILL-Abilities (True Colors SPECIAL LIVE) 河瀬 僕はめちゃくちゃ希望を持っているんです。True Colors CHANNEL を立ち上げて、声をあげている人がたくさんいることを知りました。たとえば難聴うさぎさんは難聴を武器にしてエンタメをつくることで何十万人ものファンを獲得し、それによって社会に声を届けていた。人の能力を開放するデジタルツールが普及したことで、小さな声が集まり大きなうねりになっていくんですね。 いわゆる“健常者”が築いてきた社会が行き詰まりを見せている今、新たな道を開くヒントを持っているのは、これまで“障害者”とされてきた人たちではないかと考えています。難聴うさぎさんは、「世界中の人にマンガのフキダシがついたらいいのに」と言うんです。それを聞いて、僕は歳を取って耳が遠くなってきた自分の父のことを思いました。難聴うさぎさんのような方が旗を振って社会のうねりをつくり文字デバイスが普及したら、高齢者にも生きやすい社会になっていくでしょう。僕はメディアの人間なので、風が吹いていないところでは何もできません。でも、ちゃんと風は吹いている。僕がCHANNNELでしたことは、その風がもっと広がっていくようにするお手伝いでした。世の中が少しずつだけど変わりはじめ、「変えていこう、わかろうとしよう」という気運が高まっているなかで、トップダウンではなく下から突き上げていくことが起きていたのはすごいことだと思います。TCFが蒔いた種が、今後いろいろなところで育っていくだろうという希望を抱いています。 《写真》 実施事業の記録写真。手を叩いたり、スマホで舞台を撮影しながら楽しむアゼルバイジャンの観客の様子。 《写真、終わり》 子どもも大人もステージを見守った(True Colors Festival in アゼルバイジャン) 大塚 みなさんのお話を聞いて、当事業部の取組が、アーティストや劇場、舞台関係者を中心としたパフォーミングアーツの領域を皮切りに、この数年を経て徐々に外へ外へと広がり、人々や社会に変化を促す力へと発展してきていると感じました。行政やビジネスの領域と異なる当法人の強みをいかして、これからもよりよい変化を社会にもたらす事業に取組むことが重要だと思いました。 今日は、どうもありがとうございました。 《22ページ》 4_広報成果 メディア露出 テレビ True Colors CARAVAN 札幌 2 大阪 2 北九州 2 別府 6 True Colors Festival in Azerbaijan 7 Ture Colors SPECIAL LIVE 1 ラジオ True Colors CARAVAN 別府 1 新聞 True Colors CARAVAN 東京出発式 2 名古屋 3 広島 2 札幌 1 大阪 8 別府 4 ウェブ True Colors CARAVAN 東京出発式 446 名古屋 50 広島 26 札幌 62 大阪 124 北九州 41 別府 79 True Colors Festival in Azerbaijan 19 Ture Colors SPECIAL LIVE 30 合計 True Colors CARAVAN 東京出発式 448 名古屋 53 広島 28 札幌 65 大阪 134 北九州 43 別府 90 True Colors Festival in Azerbaijan 26 Ture Colors SPECIAL LIVE 31 ※広島県立崇徳高校新聞部による崇徳高校新聞含む。 主な掲載例 テレビ True Colors CARAVAN in Sapporo 「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」 NHK北海道(2022年7月16日) 『クリエイティブディレクターが語る札幌CARAVANに込めた思い』森下ひろきインタビュー True Colors CARAVAN in Osaka 「あすリート」 読売テレビ(2022年10月1日) 『ちがうからおもしろい』【車いすダンス】#413 神原健太(36) True Colors SPECIAL LIVE 「超いろとりどり!音楽ライブ~エンタメ×ダイバーシティの出会い~」 NHK Eテレ(2022年11月12日ほか、再放送あり) True Colors SPECIAL LIVE のステージから舞台裏までを紹介 ラジオ True Colors CARAVAN in Beppu 「Clover Radio Terrace」 FM大分(2022年10月6日) 荒金由希子アナウンサーによるイベント紹介、関係者へのインタビュー 新聞 True Colors CARAVAN in Nagoya 「中日新聞 朝刊」 中日新聞社(2022年5月29日) 『自分らしさダンスで表現 金山で障害者らのフェス「人との違い、関係ない」』 True Colors CARAVAN in Hiroshima 「中国新聞 朝刊」 中国新聞社(2022年6月20日) 『障害者ダンサー躍動舞台 ダウン症・義足…違い尊重して 中区でイベント』 ウェブ True Colors CARAVAN in Tokyo(出発式) 「SDGs MAGAZINE」(2022年5月2日) 『違うって楽しい!超ダイバーシティ芸術祭「True Colors Festival」初の全国キャラバン実施』 True Colors CARAVAN in Nagoya 「こここ」(2022年5月21日) 『「超ダイバーシティ芸術祭」が全国主要都市を巡る「True Colors CARAVAN」がスタート!初回は、5月28日名古屋』 True Colors Festival in アゼルバイジャン 「Azvision」(アゼルバイジャン、2022年6月28日) 『"True Colors Festival”はバクーに』 True Colors SPECIAL LIVE 「ステージナタリー」(2022年7月25日) 『多様性を体感する音楽ライブ「True Colors SPECIAL LIVE」に井上芳雄・平原綾香ら』 True Colors CARAVAN in Kitakyushu 「NHK NEWS WEB 福岡 NEWS WEB」(2022年9月11日) 『北九州でイベント ダンスで芸術文化の多様性を』 《23ページ》 ウェブアナリティクス True Colors Festival 公式サイト ページビュー 2019年度 305,740 2020年度 224,432 2021年度 272,381 2022年度 836,697 True Colors Festival 公式SNS Twitter 以下、「インプレッション」「フォロワー」の順に記載。 2019年度 5,511,819 621 2020年度 857,260 56 2021年度 3,680,766 279 2022年度 32,057,774 29,836 YouTube 以下、「視聴回数」「チャンネル登録者数」の順に記載。 2019年度 279,326 248 2020年度 284,483 583 2021年度 2,353,057 1,012 2022年度 885,060 4,495 Instagram 以下、「インプレッション」「フォロワー」の順に記載。 2020年度 6,220,173 470 2021年度 9,017,259 575 2022年度 1,138,387 1,573 Facebook 以下、「リーチ」「フォロワー」の順に記載。 2019年度 3,869,559 670 2020年度 23,182,417 13,482 2021年度 21,764,839 11,288 2022年度 4,348,541 25,879 ※公式サイト、Twitter・YouTube・Facebookは2019年7月より、Instagramは2020年7月より運営開始し、年度毎に数値を計測 公式Twitterフォロワー数の1年間の推移 2022年度 4月 1,043 5月 1,196 6月 1,820 7月 2,757 8月 4,076 9月 6,021 10月 16,967 11月 30,901 12月 30,745 1月 31,029 2月 31,801 3月 31,430 公式YouTube視聴回数の1年間の推移 2022年度 4月 3,778 5月 10,818 6月 31,201 7月 64,545 8月 169,516 9月 347,899 10月 449,622 11月 581,382 12月 673,887 1月 762,405 2月 851,913 3月 885,060 公式サイトページビュー数の1年間の推移 2022年度 4月 20,712 5月 62,875 6月 89,639 7月 126,240 8月 173,662 9月 288,335 10月 474,498 11月 801,566 12月 816,364 1月 826,049 2月 831,855 3月 836,697 2022年度はオンラインを使った情報発信の充実を図り、公式YouTube内に開設したトーク番組「True Colors CHANNEL」では24本の番組を配信し、公式Twitterでは事業の告知だけでなく、クイズ、アンケート、プレゼントなどのフォロワー参加型企画を繰り返し実施しました。YouTubeのほとんどが日本語でのコンテンツということもあり、おおよそ87%が日本からの再生でしたが、アジア圏の多くの地域からもアクセスがあり、視聴回数は約89万回となりました。Twitterのフォロワー数は、年度始めには980人でしたが、10月に1万人を超え、11月の「THE CONCERT2022」初日には、当初目標としていた約3万人となりました。 公式サイトは、2021年度ページビュー数が約27万回だったのに比して、今年度は約84万回と大きく伸びました。日本国内からのアクセスが約70%ですが、フェスティバルを開催したアゼルバイジャンや「THE CONCERT2022」出演者の母国であるインド、アメリカなどからも多くのアクセスが見られました。今年度は前年度に比べて、4月から11月まで毎月リアルでの事業を実施したことで順調にアクセス数を得ることができました。 《24ページ》 5_総括 〈いろとりどりの花へ〉 今年度は、日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS パフォーミングアーツ事業部が日本財団と共に2019年度から開催してきた「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」(以下、TCF)が4年目を迎え、その集大成として「True Colors Festival THE CONCERT 2022」(主催:日本財団)が行われた節目の年でありました。また、2020年度以来、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、対面で人々が出会う機会をつくりづらい状況が続いていましたが、行動制限の緩和もあり、TCFでもリアルでの事業実施を本格的に再開した年でもありました。このような中で、当事業部では、TCFの新たなプログラムを国内8カ所及び海外で実施し、ソーシャルメディアを活用した新たな取組も行いました。 「True Colors CARAVAN」は、東京の文化施設を中心としたこれまでのTCFが大きく外へ飛び出した企画でした。東京での出発式の後に、名古屋、広島、札幌、大阪、北九州、別府を巡回し、日本各地の人々と多様性の価値や積み重ねてきた手法を共有するだけでなく、全国で活動するパフォーマーや地域の取組と出会い、新たな共感者を増やす機会となりました。ラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」(TOKYO FM)とタイアップした「SOCIAL LOCKS!」で、全国の若い世代と出会うことができたのも、これまでにない活動の拡がりとなったと思います。 TCF初の海外開催であった「True Colors Festival in アゼルバイジャン」では、日本とは異なる環境でのイベント実施に難しさや戸惑いもありましたが、国内では味わうことの難しいアゼルバイジャンの文化に触れる貴重な機会であったと同時に、日本の障害のあるアーティストの活躍の場を広げ、アゼルバイジャンに暮らす人々と一緒に多様性を祝福する体験となりました。 9月に開催した「True Colors SPECIAL LIVE」では、過去の事業や今年度の他のプログラムに出演したアーティストたちにも参加していただき、これまでにない大きなステージをつくることができました。TCFに初めて参加いただいたアーティストや観客との新たな出会いも生まれつつ、これまでの関係者や積み上げてきた活動が集まり、輪の拡がりを感じさせるものとなりました。また、音楽ライブでの手話パフォーマンスの魅力やアーティスト同士の共演を通じた多様性の美しさ、力強さなどを日本のエンターテイメントの世界と共有でき、テレビ放送を通して多くの人々に届けることができたこともうれしく思います。 これらの個々のプログラムが、それぞれつながり、重なり合ってTCFというひとつのうねりが生まれたことも、今年度の特徴と言えるでしょう。その大きな役割を担ったのがソーシャルメディアの企画でした。「True Colors CHANNEL」や「True Colors Festival 公式Twitter」を通じて、オンラインの共感者を拡げただけでなく、CHANNELの出演者がCARAVANについてTwitterを通じてレポートする、SPECIAL LIVEで初めて出会った人たちとライブが終わった後にも交流やコミュニケーションが続いていく、といった新しい拡がり方がみられました。 当事業部では、2017年度より専門家や有識者と共に、居心地の良い社会にむけて、障害や性、世代、言語、国籍など多様な人々が一緒にパフォーミングアーツを楽しむ機会をつくり、そのためにさまざまな挑戦を行ってきました。今年度も、街なかにある広場、ラジオやテレビ、ソーシャルメディアなどを通じて、人々のより身近な場所へ、多様性とインクルージョンのメッセージを届ける試みを実施しました。現在では、行政の取組も進み、障害のある人の芸術文化活動を推進する事業が、6年前とは比べられないほど各地で開催されていますが、行政の領域ではなかなか力が及びづらい日本のエンターテイメント分野やマスメディアの方々と、多様性やインクルージョンの価値やアクセシビリティの工夫などを共有できたことは、日本財団と共に取組んだTCFならではの成果だと感じています。 アートや芸術文化の取組は成果がみえづらい、わかりづらい、とよくいわれます。それでも、当事業部やTCFが続けてきた挑戦は、時がたって「あの時にあの出来事があったから、今がある」と振り返っていただける、人々や社会に変化のきっかけをもたらす取組になるのではないかと思います。今年度も、そのようなきっかけや出会いをあちこちにつくり、種を蒔いてきました。今後、全国や海外、オンラインなどあらゆるところで、その種が芽をだし、それぞれの場所でたくさんの人たちが関わり育ててくださって、いつの日か、いろとりどりの花が咲き誇っていくことを、私も楽しみにしています。 最後に、今年度の事業実施に当たり、格別のご尽力とご支援をいただきました関係者の皆様に深く感謝申し上げます。 日本財団DIVERSITY IN THE ARTS パフォーミングアーツ事業部 部長 大塚千枝 《25ページ》 公式SNS一覧 Twitter https://twitter.com/TrueColorsFest YouTube https://www.youtube.com/c/TrueColorsFestival Instagram https://www.instagram.com/truecolorsfestival/ Facebook https://www.facebook.com/TrueColorsFestivalOfficial TikTok https://www.tiktok.com/@truecolorsfest 《26ページ》 日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS パフォーミングアーツ事業部 2022年度 活動報告書 発行・編集:日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS デザイン:相模友士郎 翻訳:石居萌 写真 鈴江真也/True Colors CARAVAN in Tokyo・Nagoya・Hiroshima・Sapporo・Osaka 濱本英介(AcePhotographic)/True Colors CARAVAN in Kitakyushu・Beppu オオハザマノリト(TOKYOTRAIN)/SOCIAL LOCKS! 河瀬大作/True Colors Festival in アゼルバイジャン 発行日:2023年3月22日