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(カテゴリー)展覧会

(ニュースのタイトル)恋する豚研究所(千葉・香取市)で3名のアーティストによる美術展「もしも忘れたら」

(更新日)2019年06月17日

(この記事について)

「恋と衝動」をテーマに新しい福祉の実践が行われる場所で生まれた表現

本文

 都心から一時間少しの農村風景の残る千葉県香取市に位置する「恋する豚研究所」で、3 名のアーティストが介在する美術展です。恋する豚研究所の周囲では農業と林業を展開しているランドスケープ、その場に対してアーティストが実践をし、表現を表出します。想像のはじまりは恋であり、創造は衝動で開始される。展覧会のテーマは「恋と衝動」です。 衝動的に事を起こすことは、やもすれば軽はずみな行動とも捉えられますが、衝動は新しい時代を切り開くための原動力ともなります。そして恋することは衝動的です。しかし、私たちは 恋や衝動を自ら抑制する場面に多く出くわします。それは後先のことを鑑みるからこそ生じてしまう抑制かもしれません。タイトルの「もしも忘れたら」には、その抑制を忘れられたらという意味も込められています。


恋する豚研究所と栗源第一薪炭供給所について

 恋する豚研究所は、2012年創業。地域の課題と福祉はすべてがつながっていると考え、新しい福祉の実践を行っています。農業と養豚事業と障害者就労支援を組み合わせ、館内で加工した肉を屋内のレストランやショップで提供。
 恋する豚研究所に隣接した栗源第一薪炭供給所は、農業と自伐型(小規模)林業を展開することで、高齢者、障害者の雇用を生み出し、荒れている里山や休耕地の保全をしている、環境と福祉を繋ぎ地域をちょっと元気にする取り組みです。建築・ランドスケープの設計はアトリエ・ワンによるもの。

展示風景 Photo:Takusuke Hokida

展示風景 Photo:Takusuke Hokida


【出展作家】

田中一平
1985 年生まれ。東京都出身。東京藝術大学 美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。2011 年より同科教育研究助手・助教を経て、2018 年度 より美術学部DOOR プロジェクト所属。主な制作に、青森県八戸市「八戸工場大学」(2013 年)、栃木県益子市「土祭 2014」などのアートプロジェクトに参加。廃材をリユースし家具製作をする「ProjectRECON」の立上げや、金属などを用い作品の制作を行なっている。

田中一平《私の起した風かもしれない -02- It may be the wind I made -02-》/インスタレーション/ 銅、鉄、べアリンク、電線、リレー、電球、プラスチック Photo:Takusuke Hokida

田中一平《私の起した風かもしれない -01- It may be the wind I made -01-》/インスタレーション/銅、鉄、 べアリンク、電線、リレー、電球、プラスチック Photo:Takusuke Hokida

 風によって風向計が動き、銅線に触れると繋がれた電球が光る。つまり、風のきっかけによって電気のo noffが作用し電球の点滅が起こる。風の揺らぎを光に置き換えている装置です。 作品では一貫して「気配」を作り出そうとしている。気配を作り出すには、自分の意思とは離れた存在をつくることが大切かと考えている。 作品は自分の手のよって作り出すのだが、いかに自分の意思や目論見から遠ざけることができるかが制作のキーポイントとなる。その一つの 答えとして風を用いている。風が作り出すランダムな動きによって他者性を具体化させ、その動きを光に置き換え、見えやすい形として アウトプットしている。風の動きはなんとも捉えられず、垣根を超えて飛び出し、行き交う様にこの展示のテーマの恋と衝動を託している。


田中勘太郎
1989 年生まれ。東京都出身。東京藝術大学 美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。特異な行為の反復や環境から育った「ここにはない場所」を浮き上がらせながら、物語や現象を採取し、それを元に制作。物語や記録の経年代謝によるフィクション化を、展示や作品と いう別の代謝に切り替え再生する。主な展示にターナーギャラリー「
Foo-bar 展」(2011)、東京都目黒区「タイムマシンエンジン展」(2015) などがある。

田中勘太郎《ghost below overwrite》/ドローイング/紙、鉛筆、油性ペン Photo:Takusuke Hokida

田中勘太郎《ghost below overwrite》/インスタレーション/ミクストメディア Photo:Takusuke Hokida

 繋がりが切れてしまった親しかった友人の顔を記憶で描いてみたが、どうにもちがう。悪戦苦闘するも、別に好みでもない橋本環奈や、峰不二子を経由したりした。結局、ある程度納得のいく彼女の姿を描けたかと思ったが、彼女を知る友人に見せても「誰?」と返って来た。100%の女の子が紙の中にはいたのだが、私が再会したい彼女とは程遠い願望めいた姿に、ぎょっとして黒の油性マジックで塗りつぶした。


牧田沙弥香
1994 年生まれ。静岡県出身。静岡文化芸術大学デザイン学部空間造形学科卒業。アアルト大学修士課程写真専攻交換留学。東京藝術大学美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。素材と向き合いながら光のための空間を創造する。主な制作に、長野県小諸市「光の余白」(2017)、 フィンランドヨウツァ村「Into Color(2018)、茨城県取手市「色の間」(2019)など。現在取手市を拠点に国内外で活動する。

牧田沙弥香/パフォーマンス《暗譜 Play from memory》 Photo:Takusuke Hokida

牧田沙弥香《色の間 Dark, Listen, Color 》/遊び場/杉皮、藁、合成樹脂、木材 Photo:Takusuke Hokida

 小学生の頃、よく校庭の石碑を飛び渡って遊んでいました。その度先生に叱られたのは、怪我が危ないという理由だけでなかったんだと、今回の展示準備中に当時を思い出して気がつきました。お墓は素晴らしい遊び場だ、と今でもふと思います。何をする場所なのか、どんな想いで人はそれを築いてきたのか、或いは鋭い社会の目を、もしも忘れたら、素直な自分の意思を見やすいのかもしれません。それでも人は完全に忘れる ことができずに、残らせてしまうものがあるのだと思います。その残されたものを、この展示会で確かめようと 試みます。忘れたい意思なのか、覚えていたい意思なのか、意思とは別の身体の痕跡なのか、わからないまま現れてくるそれらと、ゆっくり向き合ってみます。


インフォメーション

もしも忘れたら

会期:2019 年5 月4 日(土)〜6 月30 日(日)
会場:恋する豚研究所(香取市沢2459 番1)
時間:11:00-18:00
入場無料

主催:もしも忘れたら実行委員会
協賛:株式会社 恋する豚研究所
協力:新妻葉子

お問合せ先:
恋する豚研究所
TEL0478-70-5115
E
メール:moshimowasuretara@gmail.com
Webサイト:https://www.koisurubuta.com

会場

[恋する豚研究所] 日本、千葉県香取市沢2459−1 恋する豚研究所

恋する豚研究所
日本、千葉県香取市沢2459−1 恋する豚研究所

  • 1。東京方面からお越しの方
    高速バス 東京駅八重洲中央口から銚子犬吠崎京成ホテル行き(旭経由)
    「大栄」下車 (所要時間 約 1 時間 5 分、運賃 1,650 円)
    停留所からはタクシーで 15 分
  • 2。タクシーでお越しの方
    多古タクシー(0479-76-2173)*事前予約をおすすめします。
  • 3。電車でお越しの方
    JR 成田線「佐原駅」 下車後タクシーで 25 分
    JR 成田線または京成本線「成田空港第2ビル」 下車後タクシー20 分 (約 5,000 円)
  • 4。車でお越しの方
    東関東自動車道 大栄 IC
    国道 51 号線から県道 113 号線を多古町方面へ
    赤池の交差点を左折 「道の駅くりもと」手前(大栄 IC から約 15 分)