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(カテゴリー)映画

(ニュースのタイトル)ドキュメンタリー映画の名匠・ニコラ・フィリベール監督の日本公開最新作映画『人生、ただいま修行中』

(更新日)2019年10月28日

(この記事について)

“誰かのために働くこと”を選んだ若き看護師の卵たちの日々を捉えた感動作

本文

 世界的大ヒットを記録した『パリ・ルーヴル美術館の秘密』(1990年)や『ぼくの好きな先生』(2002年)、カンヌ国際的映画祭で「もっとも光り輝く隕石」と絶賛された『かつて、ノルマンディーで』(2007年)などの作品で知られるニコラ・フィリベール監督の映画『人生、ただいま修行中』が111日(金)より東京・新宿武蔵野館を皮切りに全国で順次公開されます。
 フィリベール監督はフレデリック・ワイズマンと並ぶ、“観察”ドキュメンタリー作家の最高峰の一人で、小さくも多様な世界にするりと入り込んで映画制作をします。彼は、事実をねじ曲げることはもちろん、鳥瞰することもしません。対等な視点とほどよい距離感を保ち、被写体となる人々の日常の驚きや美しい一瞬を淡々と捉えてきました。『音のない世界で』(1992年)では、聴覚障害のある人たちの世界に、『ぼくの好きな先生』では、小さな村の小さな小学校の3歳から13歳までの13人の生徒たちとたったひとりの先生の日々に寄り添ってみせました。
 その後も意欲的に活動を続けるフィリベール監督ですが、2016年1月、塞栓症を患い救急救命室に運ばれます。一命をとりとめた彼は、医療関係者に敬意を表すべく、医療関係者、特に看護師と共に映画を撮ることを決意します。映画『人生、ただいま修行中』は、医療ドキュメンタリーではありません。舞台となるのは、彼が焦点を当て続けてきた、人間はいかにして成長することを学ぶのかというテーマとは切り離せない、ものごとの基盤となる教育の場。パリ郊外、モントルイユのクロワ・サンシモン看護学校に通う生徒たちの一瞬一瞬をおさめた、成長記録です。
 多様性が叫ばれる以前から、多様で、多層な存在や価値が共にあることを淡々と映し続けてきたフィリベール監督。他者を自分と関係する他者としてありのままに受け入れ、“共にある”という、フィリベール監督の優しいまなざしは、スクリーンを越えて、観る者に新たな一歩を踏み出す活力を与えてくれるでしょう。



【あらすじ】
 パリ郊外にある、クロワ・サンシモン看護学校に集まるのは、年齢、性別、国籍、出身地、宗教など、多様な生徒たち。右も左もわからない状態の生徒たちは、看護師の心得などの膨大な知識のインプットから、適切な手の洗い方、注射器などの医療器具の取扱い、患者を動かす介助法といった数々の治療技術の習得、患者や家族、そして思わぬ場面に立ち合ったときの対応や心のケアなどの責任に立ち向かう心構えなどを教わります。ときには患者に見立てたマネキン相手にふざけ合いながら、手探りのレクチャーは進みます。
 そんなドタバタ状態の彼らですが、インターンシップ期間として1年目から実践の場に駆り出されることになり、手に汗握る採血も点滴も抜糸もギブスを外すことも、全てが初体験。実習先は、心臓病の病棟、末期がん患者の緩和ケアをするホスピス、統合失調症や躁うつ病患者の多い精神科、HIV患者も訪れる婦人科・産婦人科、外科、小児科など……。実習先を希望できるようになるのは、2年目から。否応なしに与えられた環境に飛び込んだ看護師の卵たちに、職場の人間関係や、患者とのトラブルなど、さまざまな困難が待ち受けます。そして、立ち止まり、傷ついた彼らは、涙を浮かべながら、心の内を語り始めます……。
 かつては白衣の天使と呼ばれ、いまだに理想のイメージを押し付けられがちな、命を扱う看護師という職業ですが、全ての看護師が最初から命に向き合う覚悟を持ち合わせていたはずがなく、誰もが初めてを経験し、失敗しながら、学んでいきます。それでもこの自己責任時代に、誰かの役に立ちたいと望み、悩みながらも行動する彼らの物語は、いつしか今を生きる“わたし”の物語となります。映画『人生、ただいま修行中』は、誰もが経験したことのある、弱さ、苦悩、見習い期間を経て、成長していく人間の姿を映し出す、完璧ではないわたしたち人間そのものを描いた作品で、既に第71回ロカルノ国際映画祭への公式出品、第44回セザール賞最優秀ドキュメンタリー賞ノミネート、第24回リュミエール賞ドキュメンタリー部門ノミネートを果たしました。
 人生は、どんなときも学びと喜びに満ちていることを教えてくれる、感動のドキュメンタリー。



インフォメーション

2019111日(金)、東京・新宿武蔵野館ほか全国順次公開
「人生、ただいま修行中」

監督・撮影:ニコラ・フィリベール
出演:クロワ・サンシモン校の看護学生と指導官の皆さん

配給:ロングライド
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
2018年/フランス/フランス語/105分/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー
英題:Each and Every Moment
日本語字幕:丸山垂穂/字幕監修:西川瑞希
©️Archipel 35, France 3 Cinéma, Longride -2018

公式Webサイト:longride.jp/tadaima/

会場

[新宿武蔵野館] 東京都新宿区新宿3-27-10

新宿武蔵野館
東京都新宿区新宿3-27-10