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(カテゴリー)展覧会

(ニュースのタイトル)〈鞆の津ミュージアム〉(広島)にて、日常の中にある文字や言葉にまつわる表現の展覧会を開催中

(更新日)2018年07月31日

日本財団助成事業
(この記事について)

12名と1組の作家による、絵画からゲームまで様々な「文体」のかたちを展示

本文

部屋の中でも街並みでも、私たちの日常のいたるところには、文字や言葉が満ちあふれています。本、TV、インターネット、携帯電話、店の看板や交通標識、手紙に会話……文字には書き手の「くせ」や固有性だけでなく、時代や文化の空気を映し出してしまう、そんな多様さと愉しさが宿っています。
本展は、文字や言葉にまつわる様々な表現をご紹介するものです。何かを書くことは、別の何かが書かれないことと表裏一体。その意味で、あるひとつの言葉を様々な意匠や文体で書き換えることは、そこに書かれることのなかったものやありえたかもしれない現実に光をあて、名前をつけ、かたちを与え、この世にあらしめることなのかもしれません。


【出展者】

加藤守久
1946年東京都生まれ。「青果 加藤商店」3代目店主。30年前頃、〈本日休業〉と書いたお知らせを自店舗シャッターに貼ったことをきっかけとして、文字による創作活動を開始。それ以降、芸能人・野球・食べ物・乗り物・アニメなど様々なものについて自ら考案したランキングを独特の書体で手書きし、店頭に貼り出している。「ミスター赤トン」と自称し、持ち芸も実演。本展では、これまでにつくられた自作ランキングや言葉を展示する。

加藤守久

美馬 あけみ
1949年鳥取県生まれ。尾道市にあった「ひばり毛糸店」2代目店主。鳥取県庁での勤務を経て、1974年より、おじが経営していた同店で働き始める。〈毛糸〉の文字をかたどったクリアケースに実物の毛糸玉が無数に詰め込まれた看板は、先代のアイデアを継いだ美馬の発案により、1980年ごろ誕生。そのカラフルな装いは、地元民や観光客に広く親しまれたが、2017年6月に惜しまれつつ閉店。本展では、美馬による同意のもと、商店街組合により取り外され保管中の〈毛糸〉看板を借り受け、館内に展示する。

美馬あけみ

佐藤修悦
1953年岩手県生まれ。三和警備保障に所属する警備員。2003年、改修工事中のJR新宿駅に勤務していた際、膨大な乗降客を円滑に誘導するため、手元にあったガムテープを使い独自の案内標識を創作。その文字はインターネットなどを通じて話題となり、「修悦体」として知られるようになった。以後、修悦体は、雑誌・映画・広告など各種メディアに登場。本展では、旧作にあわせ、このたびあらたに制作された修悦体による文字を展示する

佐藤修悦「ガムテープ修悦体」

神宮司和子
1953年山梨県生まれ。高校卒業後、東京で暮らす中、体調を崩して統合失調症と診断される。その後、パチンコ店従業員や生命保険会社のアンケート取りなどとして働く一方、2回の入院を経験。その頃より、短歌の創作を開始する。近年は、片目しかない人物像や木の根っこなどを主なモチーフに緻密なボールペン画を制作。2017年には「アノニム・ギャラリー」(長野)で初個展を開催した。本展では、直筆の短歌やドローイングを展示する。

神宮寺和子「ご愛嬌」

藤井恵子
1966年広島県生まれ。リズミカルに韻をふむ膨大な量の文字を反復的かつ層状に書き連ねたり、影絵のような植物や人物、対象と数字が重なり合う図像などを描く。その一方、絵を描いた紙で折り紙をしたり、筒状の小箱をつくるなど立体物も制作。それらは日常的につくられるため膨大な数にのぼるが、時折、自らはさみで裁断することもある。本展では、それら言葉や絵による表現を展示。

藤井恵子

橋本淳司
1969年広島県生まれ。幼少期より文字に興味を持ち、身のまわりにある様々な言葉や図像を模写してノートに描きつけるなどの表現行為を行ってきた。また、街中やテレビ番組を通じて知った企業ロゴマークや映像などを記憶にもとづいて正確に再現したり、日常生活の中で見聞きしたものやできごとをシンプルに絵文字化して描写。本展では、これまでに生み出されたそれら記号的な創作物を展示する。

橋本淳司

西山友浩
1974年広島県生まれ。自ら編み出した書体と書法を用いて、独特な文字を書く。各文字の先端が極端に長く伸ばされたり丸められたりするなど、複雑なやりかたで相互に重ね合わせられることで、全体として不思議な形象があらわれ出る。以前は、毎日の生活の中で経験したことについて日記を書いていたが、その一部は自らの手により裁断され現存しない。本展では、廃棄されず保存されていた日記を展示する

西山友浩

田村貴明
1977年宮城県生まれ。親しい人や好きな芸能人・アナウンサーなど複数の異なる人物を、どの人もほぼ同じ姿かたちに簡略化した様式で描くとともに、その人たちに向けて、宛名以外はほぼ同じ文面の「手紙」を書き、手元に保管している。他方、見聞きした文字や音声を編集のうえ再現的に表現したり、建物や映像機材などに表示されているロゴや記号を丁寧に書き取りつつ描写。本展では、それらの創作物を展示する。

田村貴明

大原大次郎
1978年神奈川県生まれ。2003年武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。タイポグラフィを基軸とし、グラフィックデザイン、出版、VI、宣伝美術、パッケージデザイン等に従事するほか、展覧会、ワークショップ、パフォーマンスを通して、言葉や文字の新たな知覚を探るデザインプロジェクトを積極的に展開する。本展では、2010年に発行の季刊誌『真夜中』No.9に収録された写経《般若心経》の原画を展示。

大原大次郎「般若心経」2010年、京都 萬福寺蔵

山下 メロ
1981年広島県生まれ。平成レトロ研究家。198090年代にかけて日本全国の観光地にあふれていた雑貨みやげを「ファンシー絵みやげ」と命名し、2014年から調査・保護活動を本格化。これまでに訪問した土産店は4000店を超え、所有するファンシー絵みやげは12,000種を超える。著書に『ファンシー絵みやげ大百科 忘れられたバブル時代の観光地みやげ』。本展では、それら多種多様な絵みやげの現物を展示する。

山下メロ「ファンシー絵みやげ」コレクション

呑田潤也
1983年熊本県生まれ。日常生活を送るなか、13年ほど前より突然、頭に「降りて」くるようになった物語を文章や絵を使って記録している。ノートや段ボールの断片など様々なものに書き留められた内容は、手書きあるいは文書ソフトで後日清書し、印刷・保存。異様なまでに詳述される表現の中には、物語世界の歴史や会話、そこに存在する神々の名前をあらわす架空の文字要素一覧表などもある。本展では、それら直筆の記録創作物を展示。

呑田潤也

松尾政輝
1993年福岡県生まれ。2018年筑波技術大学大学院修士課程修了。現在は筑波大学大学院博士後期課程在籍。幼少期に視力を失い、全盲となる。視覚障害の有無にかかわらず誰でも楽しめるよう、聴覚や触覚によっても遊ぶことのできるロールプレイングゲーム『Shadow Rine』を開発。本展では、筑波技術大学で開発した、視覚/聴覚/触覚のいずれでもプレイ可能なマルチモーダル・アクションゲーム『Planet Saga』を展示する。

松尾政輝 「Planet Saga」プレイ画面

Washroom of the Day
翻訳者の原田真理恵(1982年岩手県生まれ)とプラグラマーの原田康(1980年東京都生まれ)夫妻の呼びかけにより2012年に始まったグループ。これまでに、世界各地にあるトイレのサインを画像で蒐集し、インターネットで公開してきた。本展では、メンバーにより45ヶ国で撮影・投稿された計1,200点におよぶ図像の中から原田夫妻が選定した約260点を、パネルやアルバムのかたちで展示する。

Facebookグループページ:
https://www.facebook.com/groups/washroom.of.the.day/

Washroom of the Day


【関連イベント】
8月18日(土):大原大次郎ワークショップ《空書》
8月25日(土):山下メロ《ファンシー絵みやげ講義》
お申込み方法など詳細はこちらから


インフォメーション

鞆の津ミュージアム企画展「文体の練習」
会期:2018630() 92()
休館:月・火(祝祭日は開館) 入場無料
会場:鞆の津ミュージアム(福山市鞆町鞆271-1
TEL:084-970-5380
Webサイト:https://abtm.jp

主催:社会福祉法人創樹会 鞆の津ミュージアム
協力:尾道本町センター商店街振興組合、アノニム・ギャラリー、京都 萬福寺、株式会社備後ムラカミ、社会福祉法人広島岳心会 デイサービスのろさん、社会福祉法人なのはな会 こまくさ苑、筑波技術大学保健科学部情報システム学科 大西・坂尻研究室、牧原秀雄、鞆こども園
助成:日本財団

会場

[鞆の津ミュージアム] 広島県福山市鞆町鞆 271-1

鞆の津ミュージアム
広島県福山市鞆町鞆 271-1