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(カテゴリー)レポート

雑貨のセレクトショップ〈マジェルカ〉オーナー藤本光浩さんが考える「マーケットを見据えたプロダクト制作の大切さ」。

(この記事について)

全国の福祉作業所でつくられたプロダクトを扱う東京・吉祥寺にあるセレクトショップ〈マジェルカ〉。店内には、見ているだけで心がおどるおよそ300点のアイテムが並んでいます。「社会貢献の一部としてではなく、商品自体に価値を感じて買ってもらえるか」を基準にアイテムの開発、プロデュースを行う〈マジェルカ〉オーナーの藤本光浩さんに、魅力的なプロダクト制作のコツを伺いました。

(更新日)2021年02月12日

CREDIT

[写真]  小島沙緒理

[文]  坪根育美

やりとりを重ねてアップデート。見栄え良くデザインされたものが“売れる商品”とは限らない

東京のなかでも多様な文化が集う人気の街、吉祥寺。駅から10分ほど歩くと〈マジェルカ〉と書かれた看板を掲げるなんとも楽しそうな雰囲気が漂う店に辿り着く。店内は色とりどりの雑貨にあふれていて、宝探しをしているかのようなワクワクした気持ちが湧き上がってくる。実はこの店、普通の雑貨店とひとつだけ異なる点がある。置いてあるすべての商品が、福祉作業所に通う障害のある人たちによって作られた商品なのだ。

2011年にオープンした〈マジェルカ〉は、福祉作業所で作られる商品を扱う店の草分け的な存在。ウェルフェア(障害者福祉)とフェアトレード(公正な取り引き)をかけ合わせた造語「ウェルフェアトレード」をコンセプトに、全国からセレクトした300アイテムを取り扱っている。「私たちの役割は、まだ世の中に知られていない価値を堀り起こしてたくさんの人に提供することだと思っています」と、オーナーの藤本光浩さんは話す。まさに〈マジェルカ〉を開いたきっかけも「埋もれていた価値」に気がついたからだった。

「さをり織りイラストアートバッグ」17000円。イラストや文字が手描きされた布地と大胆な色使いの「さをり織り」をあわせた一点もののバッグ。思わず目を留めてしまう存在感があり、まるでアート作品のよう。斜めに革の肩紐が入っていて表と裏で違った表情を楽しめる。内側にはファスナー付きの大きめなポケットと2つのポケットが付いていて機能面も優れている。さをり工房ゆう/兵庫県
「さをり織りイラストアートバッグ」17000円。イラストや文字が手描きされた布地と大胆な色使いの「さをり織り」をあわせた一点もののバッグ。思わず目を留めてしまう存在感があり、まるでアート作品のよう。斜めに革の肩紐が入っていて表と裏で違った表情を楽しめる。内側にはファスナー付きの大きめなポケットと2つのポケットが付いていて機能面も優れている。さをり工房ゆう/兵庫県
「さをり織りイラストアートバッグ」17000円。イラストや文字が手描きされた布地と大胆な色使いの「さをり織り」をあわせた一点もののバッグ。思わず目を留めてしまう存在感があり、まるでアート作品のよう。斜めに革の肩紐が入っていて表と裏で違った表情を楽しめる。内側にはファスナー付きの大きめなポケットと2つのポケットが付いていて機能面も優れている。さをり工房ゆう/兵庫県
「スウェーデン刺繍ポーチ」2500円と「スウェーデン刺繍ペンケース」1200円。布目を数えながらスウェーデン針を使って布をすくって刺す刺繍があしらわれている。不思議とどこかなつかしさを感じる。製作しているのは「さをり工房われもこう」。設立時からこのスウェーデン刺繍を行っている。さをり工房われもこう/東京都
「スウェーデン刺繍ポーチ」2500円と「スウェーデン刺繍ペンケース」1200円など。さをり工房われもこう/東京都

当時、メーカーのマーケターとして働いていた藤本さんは、ある企画に参加した際に全国から集めた商品のなかにあった国産の木でていねいに作られた積み木に目がとまった。「それが福祉作業所で作られているものだとわかって驚きました。そのころの私は障害のある人たちが商品価値の高いものを作っているなんて想像すらしていなかった。だからなおさら衝撃を受けました」。調べてみるとさまざまな福祉作業所ですばらしい商品が作られていた。それなのに、これまでの自分や周りにいる人たちはその事実を知らない。いや、そもそも障害がある人が普段何をしているかすら知らない人が多いのではないか。こうした現状をもったいないと思うと同時に、そこにビジネスチャンスもあると直感した藤本さんは、会社を辞めて店を開くことを決めた。

「木のzoo 小28種セット」7800円。北海道で育ったカツラの木で作られた動物型の積み木。子どもが遊ぶ用途以外に部屋に飾るインテリアとして楽しむ人も多い。さらに30種の動物が入った大サイズ21600円もあり。札幌円山動物園によるそれぞれの動物の解説が載ったミニブックも付いている。草の実工房もく/北海道

〈マジェルカ〉で取り扱う商品は、作業所で作られていたものをそのまま並べるのではなく、やりとりを繰り返しながらアップデートしているものも多い。パッケージの変更など細かい部分を提案する場合もあれば、藤本さんがいちから商品企画に関わることもある。社会貢献の一部としてではなく、その商品自体に価値を感じて買ってもらいたいという思いが根底にあるからだ。

「i am ブローチ」各2800円。細やかな手描きの模様が施された一点物のアクセサリー。藤本さんのアドバイスをもとにクオリティを上げ、バリエーションも増やしていった。以前はそのままの状態で納品されていたが、藤本さんとの出会いをきっかけに箱入りのパッケージに進化。ありがとうファーム/岡山県
「i am ピアス」各2800円。細やかな手描きの模様が施された一点物のアクセサリー。ありがとうファーム/岡山県
「アニマルブローチ」各1500円。ハリネズミ、カメ、アルマジロなどの動物がモチーフになっている。木工作業での塗装の際に下に敷いていた板で作られているため、ひとつずつ色が付いている部分が違う。さまざまな塗料が重なった不思議な色合いは偶然にできたもの。木材の風合いがさらに魅力を高めている。めだかすとりぃむ/埼玉県

「ただ見栄え良くデザインされたものが“売れる商品”というわけではありません。お客様が求めているものは何なのか、商品に独自性はあるのか、どのように店に並べるのか、どう販売していくのか。売るまでをひとつとしてデザインする。そんなマーケターの視点を持つことが大切なのです」。

「雷フラッグ(ガーランド)」1200円。実は農家が使う米袋とカラフルなカッティングシートを組み合わせたもの。名前の由来は“紙なり(カミナリ)”に頑張っているというところから。製作しているのは長野県にある「OIDEYOハウス」。メンバーが一枚一枚作っているため、それぞれに作り手の個性があらわれているのが特徴。米袋が素材ということもありとても丈夫。さまざまな場面で活用できそうだ。OIDEYOハウス/長野県
「雷キーケース」1050円、「雷名刺ケース」1050円、「雷カードケース」1280円、「雷財布」2800円など。OIDEYOハウス/長野県

「500円なら買ってもいいかな」と考える人と「2500円でも買いたい」と心から欲する人、どちらに商品を売りたいか

マーケターとしてのものの見方は、値段の付け方にもあらわれている。たとえば、手間ひまがかかるためにひと月に10個しか作れない商品があったとして、「500円なら買ってもいいかな」と考える人と「2500円でも買いたい」と心から欲する人のどちらに売りたいのか。きっと後者のほうが買った後もずっと大切にしてくれるだろう。そんなふうに藤本さんは値段を付けるとき、商品が持つ価値だけでなく届けたい相手を含めて考えている。

「手織りのカメラストラップ」と「手織りのベルト(たたみ織りと裂き織りの2種)」どちらも4500円。東京都練馬区の「社会福祉法人あかねの会」で作られる手織り生地と、東大和市にある「第2あとりえトントン」の革細工技術を組み合わせて作られている。藤本さんが商品企画をしたマジェルカオリジナル商品。あかねの会/東京都
「手織りのベルト」各4500円。あかねの会/東京都
「ぬのBAG」各2800円。神奈川県平塚市の「studio COOCA」のメンバーによるイラストを大胆に使った帆布製のバッグ。ほかにもさまざまなイラストのバージョンがあり、選ぶのに迷ってしまう。カラフルな布をバッグの裏に貼っているためしっかりしたつくり。ポケット付きもうれしいポイント。studio COOCA /神奈川県
「ぬのポーチ」各1800円、「ミニフラットポーチ」各1200円など。studio COOCA /神奈川県

こうした藤本さんのマーケター視点が至るところに反映されている〈マジェルカ〉には、福祉作業所で作られた商品を扱っている店とは知らずに訪れる客も多い。「そういうお客様が商品の背景を知ると、ほとんどの方が『いい買い物をしました』『なおさら大事にします』と言ってくれます。障害のある人が作っている、その背景も商品価値として受け取ってもらえているからこその言葉だと感じています」。

「消防ホース二つ折り財布」8000円と「消防ホースキーリング」1200円、「消防ホース長財布」10000円。生地に使われているのはなんと実際に活躍していた消防ホース! 現役時代を彷彿とさせる使い込まれた風合いがいい味に。火事場を通り抜けてきただけあって、生地はしっかりしている。新たな姿に生まれ変わってからも長く愛用できそうだ。team.Step by step /青森県
「消防ホース二つ折り財布」8000円と「消防ホースキーリング」1200円。team.Step by step /青森県
「ハンドペイントシューズ」1500円から。キッズサイズから大人のサイズまである。ドットのようなもの、筆を走らせたようなもの、絵の具のにじみをうまく利用したものなど、ハンドペイントだからこその自由なデザインが魅力的。マジェルカのHPでは、製作している「デイセンターふれあいさん」に訪問した際のブログ(https://www.majerca.com/blog/2017/03/12/1517/)が公開されている。デイセンターふれあいさん/東京都
「ウッドフレーム」1900円。英字新聞柄と無地の四角い木製ブロックをペイントして、ランダムに組み合わせている。アンティークのような雰囲気が漂う。鏡のほかに中に写真やポストカードを飾れるフォトフレームバージョンもあり。受注製作品のサイズオーダーも受け付けている。めだかすとりぃむ/埼玉県
「ウッドフレーム」1900円から。めだかすとりぃむ/埼玉県
「ニットのリップケース」1300円。見る人の心をほぐしてくれるような、おどけた表情が愛くるしいニットのケース。大きな口の中にリップや印鑑を収納できる。ストラップはカニカンという留め具付きで取り外しも可能。製作はニット専門でモノ作りを続けている工房。色違いの種類が豊富で選ぶのが楽しくなる商品。ニット工房ライク/静岡県
「8寸小判皿」1000円。手びねりで一つひとつ作られる信楽焼の皿は、少し歪みがあるが、そのゆらぎが温かみを生んでいる。シンプルな色やデザインのものが多いのは、暮らしのなかの道具として使いやすいものをという藤本さんの思いから。まとめて購入する人も多い商品。信楽青年寮/滋賀県
「一輪挿し」1000円から。一つひとつ吹きガラスで作られている。〈マジェルカ〉で取り扱う商品のなかにガラス商品を入れたいと思っていた藤本さんが、全国を探し回ってやっと見つけたもの。店の外にあるディスプレイの棚には、一輪挿しのほかにもグラスなどさまざまなガラス商品が並んでいる。うらやすガラス幸房/岡山県
「一輪挿し」1000円から。うらやすガラス幸房/岡山県
「一輪挿し」1000円から。うらやすガラス幸房/岡山県
〈マジェルカ〉オーナーの藤本光浩さん。

※商品は取材時(2020年8月)のものです。現在はお取り扱いしていないものもあります。店舗へお問い合わせください。

◯Information
《マジェルカ》
東京都武蔵野市吉祥寺本町3-3-11 中田ビル1F
電話:0422-27-1623
ウェブサイト:https://www.majerca.com/