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(カテゴリー)REPORTS

(タイトル)クラフト工房LaMano(東京都)

(この記事について)

広い庭や木々に囲まれ、のびのびと仕事ができる染織工房。地域に見守られながら、自然豊かな環境でテキスタイル製品やアート作品が生まれている。

(更新日)2017年7月7日

CREDIT

[写真・映像]  森本菜穂子

[文]  佐藤恵美

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補い合いながら一つの製品をつくっていく

9時。丘の上の大きな民家に「おはようございます!」とあいさつがひびく。〈クラフト工房 LaMano〉(以下、ラマノ)の1日が始まった。

スペイン語で「手」という意味を持つ〈ラマノ〉は、染め物や織り物などの製品づくりと表現活動を行う障害者就労継続支援施設1。東京都町田市の木造民家を改築した工房に、20代から40代まで27名のメンバーが所属している。

〈ラマノ〉には染め物、織り物、アート制作の主に3つのチームがあり、メンバーは16時間、週に5日働いている。出勤後、まずは掃除と体操から。作業着に着替え、エプロンをして、ほうきを手に取る。染織は座って行う作業が多いため、ラジオ体操も欠かせない。それぞれの持ち場に分かれる前に、出欠確認とミーティングをし、10時に作業が始まった。

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施設長の高野賢二さん(左)。手にしているのは〈ラマノ〉の畑で育てた藍の葉。畑では野菜のほか、藍や綿も育てている(右)。

「ものづくりをする〈ラマノ〉の前身は、かつては障害児の造形教室でした」と話すのは施設長の高野賢二さん。障害者が社会で働く場所が今よりも少なかった当時、造形教室の主宰者と保護者を中心に1992年に設立されたのが〈ラマノ〉だった。

発足から数年後、高野さんは先輩の誘いで〈ラマノ〉で手伝うようになった。学生時代の専門は染色。仕事を始めた頃は障害についての知識はほとんどなかった。

「何も知らなったので、障害のある方が染織の作業をするのは難しいのではないか、と初めは思っていました。でも一緒に仕事をするとそんなことはまったくなかった。自分と同じように得手不得手もあれば、できることもできないこともある。最初から最後まで一人で仕上げることは難しくても、メンバーとスタッフが役割を分担することで一つの製品ができあがる。そこが魅力的だと思いました」


気持ちよく仕事をするための工夫

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スタッフは美大の出身者も多い。

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染織は、主に織りチームと染めチームに分かれている。織りチームは十数台もの織り機を備えた別棟で糸を紡いだり、機織りや刺繍をしたり。それぞれのペースや向いている作業をスタッフと相談しながら、黙々とこなしていく。

染めの担当は男性陣。藍や栗、柿渋、茜、マリーゴールドなど数種類の天然染料を扱う。生地や糸を、根気よく数回にわたり、ていねいに染め上げる。原料の一部は、敷地内でとれた植物や地域から分けてもらった玉ねぎの皮を使用することも。

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この日、「のび太」のコスプレをしていた平野智之さん。その理由とは……。平野さんは、〈ラマノ〉では機織りをし、家では《美保さんシリーズ》という絵も描いている。

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絞り染めは、染める前に糸で布をくくる。

「その人にぴったりと合っている作業だとメンバーも落ち着いてきます」と高野さん。はじめに一通りの作業を体験して、その人に向いている仕事を探す。

「どんな仕事でもそうですが、やる気や達成感も大事にしています。年に2回行っている染織展では1000点くらいの製品を売りますが、そこで販売することを目標に制作しています」

社員旅行のように、ハイキングや遊園地、温泉、ホテルでビュッフェなどお楽しみの時間も定期的に設けている。「セレクト・ライフ・プログラム(通称・SLP)」と呼び、スタッフが提案した企画のなかからメンバーが好きなレクリエーションを選んで、みんなで出かける。こうした余暇の時間も仕事の励みとなる。


日々の手仕事から生まれた表現活動

アート活動も、ここ〈ラマノ〉では仕事の一つだ。染織以外の表現活動を行うようになったのは2006年。

「それまで製品のために絵を描いたり、レクリエーションで出かけた先でスケッチをしたり、ということはありましたが、それを一つの作品として見ることはありませんでした。ただ、テキスタイルの仕事よりも絵や刺繍で表現することが合うメンバーもいて。福祉の現場で取り組まれるアート活動の存在を知り、〈ラマノ〉でも仕事の一つとしてアート活動を設けました」

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尾崎文彦さんは、大胆な構図で画面いっぱいに描く。キャンバスに赤い絵の具で下地を塗り、その上にパステルで描くことが多い。

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刺繍でオリジナルのお守りをつくる五十嵐朋之さん。下がきはせず、自身で染めた生地に直に塗っていく。


ボランティアは約1,000人。地域に開かれた工房

取材した日は、ボランティアさんたちとの親睦会だった。敷地内の竹林で採れる筍と畑で育てた野菜で、昼食が振る舞われた。

ボランティアは初めはメンバーの保護者が中心だったが、今では多くの地域の方々が参加し〈ラマノ〉を支えている。それぞれの得意分野を生かし、縫製やアイロンなど製品の仕上げのほか、畑仕事や庭の花々の手入れ、樹木の選定などを手伝う。活動に興味を持つ人や、手仕事や土いじりが好きな人など徐々に手伝う人が増えていったという。

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今や年間を通して関わるボランティアは約1,000人。「ボランティアといっても、関わるうちに自分の方が癒されるようになる。そんな魅力があって、みなさん続けているんではないでしょうか」と、ボランティアとして関わる枝松和子さんはいう。

ふらりと来て写真を撮るフォトグラファー、縫製を終えた袋いっぱいの生地を持ってくる主婦、熱心に樹木の刈り入れをする元サラリーマンなど、さまざまな人が〈ラマノ〉にやって来る。こうした多くの出会いが生まれたのは、積極的に工房を外に開いてきた長年の蓄積と、“また来たくなる”居心地のよさにあるのだろう。

自然豊かで開かれた環境、そして〈ラマノ〉のメンバーやスタッフがつくる柔らかな雰囲気が、たくさんの人を惹きつけるのかもしれない。


Information
クラフト工房LaMano
東京都町田市金井5-14-18
tel. 042-736-1455
http://www.la-mano.jp

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KEYWORDS(記事中の言葉)

註:障害者就労継続支援施設

「就労継続支援事業」とは、一般企業等に雇用されることが困難な障害者に対して就労の機会を提供する事業。生産活動等の機会の提供を通じ、知識と能力向上のために必要な訓練を行う。雇用契約を結び利用する「A型」と、雇用契約を結ばないで利用する「B型」がある。