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(カテゴリー)アーティスト

SAKURA

クレジット

[写真]  関 めぐみ

[文]  杉瀬由希

読了まで約2分

(更新日)2018年07月28日

(この記事について)

スタイリッシュでクールなイラストを描くかと思えば、モダンアートのようにダイナミックなペイントワークも。SAKURAさんの描く女性は、表現の手法は変わっても一貫して美しい。そしてその美しさは、見る者を豊かな気持ちにしてくれる。

本文

美しいものへの賛美のように

迷いのない線と洗練された色使い。モードファッションに身を包んだパリジェンヌのように、クールで、時にコケティッシュな、ペン画の女性たち。SAKURAさんが絵を描き始めたのは4年前、神奈川県平塚市の社会福祉施設〈studio COOCA(スタジオクーカ)〉(以下、クーカ)に通うようになってから。市内で開催された〈クーカ〉の展覧会でメンバーの絵を見て触発され、自ら所属を希望した。当初はデイケアとの併用だったが、中学校で美術部の非常勤講師を務める母親から絵に専念することを勧められ、今は週に1日居酒屋でアルバイトをし、週4日は〈クーカ〉に通う。

つくえにむかって、がようしにえをかく、さくらさんのしゃしん。ティーシャツすがたにメガネをかけた、ショートカットのじょせい。みぎてにはみずいろ、オレンジ、クリームいろのブレスレットをしている。

SAKURAさん本人もお洒落だ。かつて祖父が呉服屋を営んでいたという子供の頃の環境や、メイクアップの勉強をしていた姉の影響もあるのだろうか。服やアクセサリーの配色やバランス、それに合わせたメイクなど、自分のスタイルを持ったコーディネートからは絵に通じる印象を受ける。

作品にはどれもモチーフとなる絵や写真があるが、描いていくうちに色形がどんどん変化して行き、仕上がったときにはSAKURAさんの絵になっている。

「見ながら描いているんだけど、その通りにはならなくて、自分の目で描いている感じ。見たものを自分の感覚に取り込んで描いている感じです」

題材にするのは、ファッション誌やお気に入りの映画のワンシーンなど。昨年、国立新美術館の「ミュシャ展」を観に行った際に買い求めたカタログも、インスピレーションを与えてくれる大事な資料だ。またペンやアクリル絵具など画材によって作風が変わるのもSAKURAさんの持ち味だ。

さくらさんのさくひんしゃしん。じんぶつのイラストで、ビビットけいのあかるい、いろをつかったさくひんがおおい。

キャラクターが動く日を夢見て

SAKURAさんには統合失調症がある。最近は安定しているが、その波は絵に表れる。入所以来、彼女を見てきたスタッフいわく、「時間の感覚や自分が何をしているかがわからなくなるとき、絵は暗い色になり線も不安定になることもあります」とのこと。そうした体調面などに配慮しながら本人のペースに合わせ少しずつ作品を増やし続けているそうだ。

今、目の前のSAKURAさんは、明るく穏やかに描くことの魅力をこう語る。

「楽しいのは、絵の中に入っていくこと。どういう色の服にしたらこのキャラクターは喜ぶかなとか、こういうキャラクターはどういう行動を起こすだろう、アニメーションにしたらどうなるかなとか、いろいろ考えながら描くのが面白い」

じょせいのえをかいている、さくらさんのてもとのしゃしん。つくえには、ぼっくすにはいった、たいりょうのぺんが並んでいる。

今後どんなことに挑戦したいのか尋ねると、「絵本をつくりたい。キャラクターを動かしたいんです」と、すぐに答えが返ってきた。確かに、ストーリーを考える人とコラボレーションするのも面白そう。そう伝えると、うーんと少し考えてから「全部自分でやってみたい。欲張りですよね」と笑った。そして、こう付け加えた。

「自分は未熟だと思っているので、それができるにはまだほど遠い。20年くらい絵をやったら、絵本は考えようかなと思っています。今4年目だから、あと16年」

描くことで自分を見つめながら、SAKURAさんはこれからの長い人生を焦らず一歩一歩、前へ進もうとしている。


関連人物

SAKURA(サクラ)

(SAKURA(サクラ)さんのプロフィール)
神奈川県在住。2015年より〈スタジオクーカ〉に所属し、絵を描き始める。モチーフはファッション誌の女性が多い。描かれる女性たちのどこか憂いのある表情や、気品溢れる佇まいには本人の持つアンニュイな雰囲気やスマートなルックスが色濃く反映され、アクリル絵具やペン、色鉛筆などさまざまな画材を用いながら「自分の表現方法=自分とは何か」を日々模索している。
(SAKURA(サクラ)さんの関連サイト)