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(カテゴリー)ARTISTS

(タイトル)半澤真人

(この記事について)

配管が複雑に入り組んだ工場が、大胆な構図と緻密な筆致でキャンバスの上に再現されていく。半澤さんが握る筆先から彩られていく工場は、建造物なのに不思議と生命感があり、観る者の想像力を刺激する。

(更新日)2019年10月28日

CREDIT

[写真]  斉藤有美

[文]  飛田恵美子

川崎で生まれ育った作家が描く、生命感溢れる工場風景。

(写真について)「工場」シリーズ/顔料ペン・アクリル絵の具/160×230mm/制作年不詳
(写真について)「工場」シリーズ/顔料ペン・アクリル絵の具/制作年不詳 写真提供:studioFLAT
(写真について)「工場」シリーズ/顔料ペン・アクリル絵の具/制作年不詳 写真提供:studioFLAT
(写真について)「工場」シリーズ/顔料ペン・アクリル絵の具/制作年不詳 写真提供:studioFLAT

神奈川県川崎市にある障害者支援施設。毎週木曜13時から15時までは、障害のある作家を支援する<studio FLAT>によるアート制作の時間だ。十数人が思い思いに時間を過ごす中、とびきり楽しそうに絵を描く男性に目が留まった。

(写真について)絵を描いている最中、ずっと笑顔だったことが印象的だった。

彼、半澤真人さんがモチーフとしているのは工場だ。写真を参考に描くが、完成した作品は写真とは違った魅力をまとう。ひとつの生命体のようなダイナミックさがあり、眺めているうちに物語が生まれそうだ。

(写真について)展覧会に出す予定の絵。細部までびっしりと描き込んでいく。

半澤さんはお父さんから絵を教わり、支援学校の頃から絵画教室に通っていたという。<studio FLAT>の噂を聞き、2010年からこの施設に通所するようになった。

「最初、半澤さんはキャラクターの絵を描いていて、『こういうのが好きなんだな』と思っていたんですが、お母さんが『うちの子もっとすごいんです』と、写真の模写が得意なことを教えてくれたんです。半澤家の家族写真シリーズ、車やエンジンのシリーズを経て、工場にたどり着きました。半澤さんの絵のいいところが全部詰まっていて、『これだ!』と思いました」と、<studio FLAT>代表の大平暁さんは振り返る。

(写真について)大平さんは多摩美術大学卒のアーティスト。2010年から半澤さんの作品制作をサポートしている。

工場を描くようになってから、半澤さんの絵はハンカチやマスキングテープのデザインに採用されたり、日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 公募展2018にて上田バロン賞を受賞したりと、広く認められるようになった。展覧会のオークションでも作品が高額で落札されたそうだ。

ところで、川崎といえば日本の三大工業地帯のひとつ。臨海部には工場が立ち並び、夜は幻想的な風景を見せる。そうした川崎ならではの地域性が作品に表れている……と考えるのはこじつけだろうか。

「半澤さんが住んでいるところは工場エリアじゃないし、どうでしょうね。作品のモデルを川崎の工場に限定しているわけではないんですよ。ただ、ネットで工場写真を検索すると川崎のものがヒットするから結果的に川崎の工場をたくさん描いていますけど」と大平さんは冷静に話す。

(写真について)「工場の前はどんな絵を?」と質問すると、半澤さんはいそいそとこの紙を取り出した。あじさい、動物、カメレオン、鳥、オートバイ、伊藤若冲、と書かれている。質問に答えられるようにとお母さんが持たせてくれたらしい。

でも、川崎で生まれ育った作家がこんなに見事に工場の風景を描くとなると、ついそこに関連性を見出したくなってしまう。半澤さんも、小学校の社会科見学で工場を見に行った記憶があると語る。ほらやっぱり!

それに何より、「工場の絵を描くのは楽しいですか?」と聞くと、半澤さんは満面の笑みで「楽しいです」と答えてくれた。まぁ、この質問に限らず、半澤さんは基本的にニコニコと笑っていたのだけど。


PROFILE関連人物

半澤真人さんの顔写真

半澤真人

(英語表記)HANZAWA Masato

(半澤真人さんのプロフィール)

1976年生まれ。神奈川県川崎市在住。に所属。はつらつとしたエネルギーを放つ工場を描く。アールブリュット作品全国公募入選、日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 公募展2018にて上田バロン賞受賞。

(半澤真人さんの関連サイト)

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