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(カテゴリー)コラム

(タイトル)ダイバーシティな「ゲストハウス」ガイド vol.3

(この記事について)

旅は多様性を学ぶ絶好の機会。近年、宿泊先として若い世代を中心に人気なのがゲストハウスです。人気の理由はゲストハウスの存在が地域と近く、暮らすように滞在できるからかもしれません。コロナ禍の現在、かつてのように気軽に旅することはかなわなくなってしまいました。状況が落ち着いた時、ゲストハウスを旅の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。日本の旅のあたらしいかたちを提案する『ゲストハウスプレス』編集長の西村祐子さんに多様性を体感できるゲストハウスを紹介していただきました。

(更新日)2020年11月27日

CREDIT

[文・写真]  西村祐子

あらゆる人を包み込む大きな多様性の海のなかで

ゲストハウスと聞くと、「若い人や外国人が来る安宿でしょ?」って思う人も多いかもしれない。実際、コロナ騒動が起こるまでは、日本のゲストハウスには世界各国から旅費をセーブしたい旅人も数多く訪れていた。でも来るのは外国人や若者だけじゃない。海外からの往来が閉じられている今も、ゲストハウスは、あらゆる人を包み込む大きな多様性の海のなかで、迎える側も迎えられる側もあたたかく包みこむような存在となっている。ここでは日本各地の3つの異なるタイプの宿を紹介したい。

シーナと一平 東京都

東京都豊島区にある「シーナと一平」は池袋からひと駅、椎名町にある築45年の民家をリノベーションした小さなまちやどだ。元とんかつ屋だったという店舗の看板をそのまま残し、一階はシェアキッチン工房やカフェとして貸し出しもしている。

宿を切り盛りするのは女将のさちこさんと番頭のつよぽん。さちこさんは孫がいるとは思えないハツラツとした風貌で、語学はできないけど世界一人旅が大好きな女性。週末の夜はバー営業にも加わる。つよぽんはイラストが得意で気が利いてお掃除大好きな男性。下町商店街とデコボココンビの2人が醸し出す親しげな雰囲気に惹かれた地元の常連飲み客も多い。2020年11月現在、宿はお休みして、1年限定で小商いをしたい人たちが集まるシェアハウスとして運営中。

経営主体も地元有志によるまちづくり会社で、オーナーだけではなくいろんな人が関わって共同経営しているスタイルも魅力。関連するコミュニティラジオ局「コレデイイノダラジオ」ではダイバーシティな話題も多く取り上げられている。

シーナと一平
東京都豊島区長崎2-12-4

神戸ゲストハウス萬家(マヤ) 兵庫県

神戸の中心地三宮のとなり、JR灘駅近くにある元医院の古ビルをリノベーションしてつくられたのが「ゲストハウス萬家(マヤ」だ。オーナーの朴 徹雄さんは、生まれも育ちも韓国ソウル。大学卒業後、ワーキングホリデーで日本に来て就職。「ゲストハウスで日韓交流を」と考えていた折、偶然訪れた神戸の下町商店街に惚れ込む。そして外国人かつ金なしコネなしのアウェイ状態から、時間をかけて関係性を構築、宿の改築時も地元の若い建築チームと組んでまちの人を多く巻き込み、宿の開業を実現させた。

「神戸のふつう」に出会う旅、が宿のコンセプト。近くの下町市場をゲストとともに歩く「つまみ食いツアー」なども開催し、暮らすように滞在する体験価値を提供している。現在はゲストハウスの営業を続けつつ、コロナ禍で帰国できなくなった海外留学生の滞在支援も行う。朴さんは日本語が堪能過ぎて外国人ということを感じさせないほどだけれど、宿に行けば韓流アイドルのようなにこやかな笑顔と心遣いで、スタッフ数人とともにいつでも誰でも、温かく出迎えてくれる。

神戸ゲストハウス萬家(マヤ)
兵庫県神戸市灘区城内通4-4-10

 

古民家ゲストハウス汐見の家 愛媛県

尾道(広島県)から今治(愛媛県)まで続くしまなみ海道。そこから少し外れたゆめしま海道と呼ばれる瀬戸内の小さな島、佐島にあるのが「古民家ゲストハウス汐見の家」だ。

東京在住のオーナー西村暢子さんは、曽祖父の家だった古民家を引き継ぐことになり、解体せずに有効活用する手段としてゲストハウスとして蘇らせることを選んだ。地元住民の協力も得て改修し、五右衛門風呂や古井戸も再び使えるようにした。縁がつながり女将としてこの島に来たけいこさんはシングルマザー。島には子供が少ないため、子供たちは地域の人に見守られながらすくすくと育っている。

同じく管理人のみえさんも移住組。コロナ前まではスタッフや旅人とともに夕飯を食べる「シェアご飯」も人気で、彼女たちが媒介となり、以前からの島民とも自然なかたちでと交流ができるのがこの宿のよいところ。サイクリングやゲストハウス好きが訪れるようになり、最近は宿を訪れたことを契機に島に移住する若者なども増えてきたそうだ。

古民家ゲストハウス汐見の家
愛媛県越智郡上島町弓削佐島299

どの宿も、老若男女、国籍も問わず、誰しもを受け入れる懐の広さを持っている。じっくり数週間滞在するもよし、ふらりと泊まらずにお茶を1杯いただくだけでも、楽しい偶然の出会いが待っているのがゲストハウスの魅力だ。


PROFILE関連人物

西村祐子

(英語表記)NISHIMURA Yuko

(西村祐子さんのプロフィール)

個性豊かで素敵な日本のゲストハウスを「旅のあたらしいかたち」として紹介するメディア・ゲストハウスプレス編集長・ワンダラーズ出版代表。書籍『ゲストハウスプレス あたらしい旅のかたちをつくる人たち』として編著出版、ライターとしてまちやソーシャルグッドにまつわる取材執筆もしている。

(西村祐子さんの関連サイト)

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