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“しょうがい”とアートをつなげる法律って何?その2

目次

【イラスト】いくつもの手の助けを得て箱の中から出ようとする人

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“しょうがい”とアートをつなげる法律って何?その2

クレジット

[イラスト]  naoya

[写真]  池田礼

[文]  石村研二

読了まで約14分

(更新日)2022年11月25日

(この記事について)

「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」を考えるコラムシリーズ。第2回目は障害のある人がアートやカルチャーにふれ、楽しみ、深めるための中間支援を行う障害者芸術文化活動支援センターのお話です。

本文

前回、「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」について簡単に解説しましたが、今回はその法律の主旨にのっとって、障害のある人が実際にもっと芸術文化に触れられるように各都道府県で活動している障害者芸術文化活動支援センター(以下、支援センター)から2つのセンターを紹介したいと思います。 

この支援センターの活動について知ることで、障害のあるなしにかかわらずよりよい社会に向けて何ができるのか、少し見えてくるのではないでしょうか。

参考:厚生労働省障害者芸術文化活動普及支援事業


登場人物

ダイバーさん(学ぶ人)

アートに興味があるが自分にはできると思っていない。福祉にも興味があり、手話ができる。

シティさん(教える人)

ダイバーシティの実践のため福祉やアートの現場でいろいろなことをやっている。


障害者芸術文化活動支援センターとは

【イラスト】支援センターのイメージ。奥の壁に5枚の絵がかかり、テーブルが2つある部屋。奥のテーブルでシティさんが男性と話をし、手前のテーブルでダイバーさんが絵を描く二人を眺めている。

シティさん

今回は障害者の文化芸術活動の中間支援のために設置されている支援センターについて学びましょう。支援センターは2014年度にモデル事業として一部の都道府県に設置されはじめ、2017年度からは「障害者芸術文化活動普及支援事業」として各都道府県に設置されるようになりました。支援センターが行うのは、主に相談支援、人材育成、機会創出、情報発信の4つとされています。

ダイバーさん

具体的にはどんなことをやっているんですか。

シティさん

障害のある人の文化芸術活動に関する悩みを聞いて解決方法を一緒に探したり、公募型の展覧会やワークショップをやったり、福祉作業所向けに研修を行ったり、地域で行われている展覧会や地域のアーティストの情報を集めて発信する活動などです。芸術文化活動を通じて地域の障害者の社会参加の促進を目指すいろいろな活動をしているといったところでしょうか。詳しくは、支援センターで聞いてみましょう。

ダイバーさん

その地域の障害のある人たちがもっと文化芸術活動にかかわれるように、個人や福祉事業所を支援しながら、障害のあるなしにかかわらず芸術文化活動にかかわる人を増やしていこうという活動なんでしょうか。実際に行って話を聞いてみるのが楽しみです。

地域センターは都道府県が運営しているんですか?

シティさん

自治体が直接支援センターを運営することもありますが、多くは、地域で活動する社会福祉法人やNPO、文化団体などが委託されて行っています。ただ現在、支援センターが設置されているのは39の都府県で、センターが設置されていない地域では全国7つのブロックを統括する広域センターが地域のサポートしながら、支援センター設置に向けた取り組みを行っています。

ダイバーさん

全国にできてくれるといいですけど、大変なことも多くあるんでしょうね。現場の人たちの思いも知りたいので、早く話を聞きに行きましょう!


TASCぎふ

岐阜市のぎふ清流文化プラザ1階にある岐阜県障がい者芸術文化支援センター(TASCぎふ)にうかがって、センター業務総括の土屋明之(つちやあきゆき)さんと主任の二村元子(ふたむらもとこ)さんにお話を聞きました。

岐阜市の中心部にあるぎふ清流文化プラザにセンターがありますが、施設に入ってすぐ展示スペースがあり、さらに奥にギャラリーがあります。こちらは公益財団法人岐阜県教育文化財団が運営しています。

【写真】壁に絵、天井からワンピース、中央の台に立体作品が置かれたギャラリー。ダイバーさんとシティさんが見学している。

TASCぎふのギャラリー

ダイバーさん

面白い作品がいっぱい展示してありますね。ここはどんな場所なんですか。

二村さん

2018年に支援センターが立ち上がって、作品を展示することから始めてみました。ギャラリースペースでは企画展をしたり、チャレンジ企画といって、展示をしたい個人や団体さんを公募して、それを実現させるという機会を設けたりしています。

今、行っている企画展は、tomoniアートサポーターが企画したものです。tomoniアートサポーターは学生、福祉関係者、当事者の方など登録者が60名以上いて、展示企画をしてもらったり展覧会のスタッフとしてお手伝いしてもらったりしています。

【写真】二村元子さんがギャラリーで開催中の企画展もぐもぐキッチンのポスターを紹介している

二村元子さん

ダイバーさん

障害者の文化芸術活動に関わる人がそんなにたくさんいるんですね。ほかにはどのように支援を広げていっているんですか?

土屋さん

支援を広げていくために福祉系の大学と協定を結ぶなどして、主に二村さんに障害のある人たちのアートの鑑賞会をゼミの中で行ってもらったりしています。

二村さん

本当にここ1、2年で大学生や若い人が興味を持つようになった肌感覚があって、実際にtomoniサポーターの大学生が論文に取り入れるため、支援センターも調査協力や情報提供をしています。やはり、待っているだけではなく、大学に直接出向いて実際に作品を見てもらって、その面白さを伝えれば、興味を持ってもらえる可能性が高まりますから。

ダイバーさん

ギャラリーがあったり、たくさんのサポーターがいたりすごいですね。ほかにTASCぎふならではの特徴があったりしますか?

土屋さん

特徴といえば、他の県では民間の法人などが行うことが多い中、県が深く関わる財団が運営している点でしょう。比較的予算もあるので、市町村を巻き込もうというときも、県の予算を活用しながら実績を作って、市町村にアピールをするということもできています。

二村さん

岐阜県は広いので、地域が主体にならないと根付きにくいんです。だから、私たちが全部行ってしまうのではなく、各地域でキーになる人や団体などと連携しながら活動を作っていって、だんだんと私たちがいなくても、継続して活動できるようにしていきたいと思っています。そのときに県が深く関わっているというのは利点になります。

【写真】話をする土屋明之さん

土屋明之さん

シティさん

支援センターの重要な役割のひとつに相談業務があると思いますが、寄せられる相談内容にはどのようなものがありますか。

二村さん

当事者の方からも団体からもいろいろな相談が寄せられます。作家として食べていけるようになりたいとか、著作権について教えて欲しいとかそういうことですね。最近は加えて作品を利用したいという地元企業からの相談が増えてきています。

土屋さん

企業もSDGsに取り組む中で、障害者への支援にも力を入れているようです。大垣共立銀行からは銀行の封筒の表面に作品を掲載したいという要望があって、作家さんを紹介しました。そのときに、われわれが間に入って、作品データを提供された方には作品利用料を支払うようにしてくださいとか、作者の権利を守ることも大事にしてくださいというお願いをしたり。そういう広める事と守ることも行っています。

【写真】障害のあるアーティストの作品がプリントされた銀行の封筒、エタノール消毒液容器、マスクケース

TASCぎふが紹介したアーティストの作品が採用されたグッズ

シティさん

これまでなかなか支援や情報が届かなかったような方へのアプローチも支援センターの重要な役割だと思うんですが、どのような取り組みをされていますか。

土屋さん

そこはなかなか難しいところですね。各市町村の社会福祉協議会や作業所に情報提供を求めたり、特別支援学校との関係で、生徒さんたちの絵を展示したり、卒業生の情報を集めたりしてほそぼそと行ってはいますが。

最近は、県の障害福祉課と連携を取りながら、各市町村の施設や作業所にどういう支援が必要なのかアンケート調査を行って、少しでもアート的な活動を行いたいけどできないというような声があったらこちらからアプローチするということも行っています。

ダイバーさん

地道に努力するしかないんですね。大変だと思いますが、4年くらいやってきて、変わってきたなと感じることはありますか。

二村さん

障害者に接したことのない人は、どう接してよいかわからないとか関係ないことと捉えていると思うのですが、やはりアートを通すことで、接点が生まれて来ている感じはしています。さっき言ったように大学に行ったり、商業施設でワークショップを行ったりもして、そういったところから興味のない人たちとの接点を見出していくことが大事ですね。

【写真】ワークショップで大きな紙の上でローラーで絵を描く参加者とそれを見守る二村さん

二村さん

作品を見てもらえば本当に面白いので、何も説明しなくても、興味を持ってもらえます。展示を見に来る方も最初の頃は「障害者頑張ってるね」みたいな感想が多かったんですが、最近は本当に作品自体を面白いと思ってもらえている感じがして、一般の人たちも意識が変わってきたなと感じています。

最終的には、みんなが共生社会の一員として違いを認めつつ、お互いの世界の面白さを知って、支援センターも要らなくなるのが1番いいんだと思います。ただ、障害のある人の中には、作品や自分の権利を守ることの判断ができにくい方もいるので、そこはまだ私たちがフォローしていく必要があると思っています。

ダイバーさん

支援センターが当事者個人と、大学や福祉施設、美術館、地元企業をつなぐハブになり、全体を底上げしようとしているのが印象的でした。支援センターがあれば障害者の文化芸術活動が広まるわけではなく、周りと上手く協力していくことが大事なんだということがわかりました。

【イラスト】支援センターを中心に、大学、美術館、市町村、企業、福祉施設、劇場がつながっているイメージを描いたイラスト

オープンアトリエに行ってみよう!

同じ岐阜市内にある岐阜県美術館のアトリエで開催されたオープンアトリエを見学して来ました。オープンアトリエはTASCぎふが定期的に開催している誰でも参加できるイベント。今回はその特別版として、岐阜県美術館との共催でアーティストの大平由香理さんを講師に迎えて開催されました。

アトリエの半分を占めるのは、大平さんの制作中の作品「脈流」。この作品に参加者たちの作品が加わってみんなの作品ができあがっていきます。

【写真】広いアトリエを上から見た写真。右側半分に色とりどりの大きな絵。左側に参加者がいて大平さんが真ん中で説明をしている。イラストのダイバーさんとシティさんがながめている。

作品の前で説明をする大平さん

まずはテーブルで思い思いに作品を作ります。制作しているときの集中力がすごい!

【写真】テーブルの上に色とりどりの紙とサインペン、3人の参加者が絵を描いている。
【写真】青い花の絵に緑色のペンで絵を描き加える参加者
【写真】描いた絵をハサミで切り取る参加者
【写真】参加者のひとりが切った絵を上に貼り付け、サポーターがそれを補助している。

床においた紙に直に絵が描けるスペースもあります。

【写真】大きな紙の上で3人の参加者が絵を描いている。大平さんとサポーターたちが声をかける。
【写真】参加者のひとりが素手で絵の具を紙に塗り付ける。青、緑、黄色のカラフルな作品ができていく。

できた作品を窓に貼って、大平さんとみなさんで制作を振り返ります。

【写真】窓ガラスにはられた作品を見ながら、大平さんがつくった参加者に話を聞いている。

大きな作品の一部になるかな。

【写真】大平さんの作品の上に自分の作品を載せ写真を撮る参加者。サポーターとダイバーさん、シティさんが作品を見ながら話をする。

ダイバーさん

参加者の作品作りのときの集中した表情と、できた作品を見せるときの楽しそうな表情が印象的でした。やはり多くの人のサポートは必要ですが、サポートしている方たちも楽しそうで、みんなで一緒に作品を作っているという一体感が感じられました。言葉にするのが難しいですが、障害のあるなしにかかわらず、出来上がった作品もですが、作る過程にこそ価値があるということを感覚的に理解できた気がします。


SOUP

次にうかがったのは、仙台市にある障害者芸術活動支援センター@宮城(愛称:SOUP)です。今年8月から仙台市中心部のファッションビル「仙台フォーラス」の7階に移転。事務所にワークショップなどをできるスペースを併設し、作品や商品などもおいてあります。誰もが気軽にふらっと寄れるスペースです。

こちらを運営するエイブル・アート・ジャパンの柴崎由美子さんと髙橋梨佳(たかはしりか)さんにお話を聞きました。

【写真】アート作品が描かれた壁の前で話をする柴崎由美子さんと髙橋梨佳さん

左:柴崎由美子さん、右:髙橋梨佳さん

シティさん

支援センターとしてはすごく開かれた場所という印象ですが、SOUPの支援センターとしての特徴はなんでしょうか。

柴崎さん

2014年のモデル事業の初年度から活動を始めて8年経ちますが、今年この場所に移転してきました。ここは仙台の中心でもあり、ファッションビルの中ということで、みんなが気軽に遊びに来るようなパブリックな場所です。そういう場所に事務所を出したかったので、やっと出せました。障害者芸術活動支援センターという名称が長いしとっつきにくいからSOUP(スウプ)という愛称でやっています。

髙橋さん

ここに移動してから、ふらっと立ち寄る人が、すごく増えています。

【写真】SOUPが入っているファッションビル仙台フォーラスの前にいるダイバーさんとシティさん。沢山の人が行き交う通りにある。

SOUPが入る仙台フォーラス

ダイバーさん

相談業務がひとつ重要な機能だと思いますが、どんな相談が多いですか?

髙橋さん

県政だよりに情報を載せてもらったりもしているんですが、それを見て、1人で絵を描いているけど、SOUPに興味を持ったから行ってみたいという相談だったり。

ここは、障害の種類や障害者手帳の有無も問わないし、ご自身が障害がある場合だけではなく、ご家族の介護をしていて家族だけにコミュニティが限られているから、外に出てなにかしたいという相談だったり、引きこもりの方が誰かと交流したいとか、居場所を求めている方の切実な相談を受けることが結構あります。

ダイバーさん

モデル事業から始めてこれまでで相談内容とか、状況とか変わってきたと感じることはありますか。

柴崎さん

私が宮城に戻ってきた2011年には、障害のある人の文化芸術活動は「とっておきの音楽祭」など数えるほどしかありませんでした。ですが、この10年で、芸術活動の拠点も増え、仙台市の生涯学習施設である「せんだいメディアテーク」など、県内の文化施設が障害のある人たちとの関わりをいろんな形で増やしてきていたりして、10年で見える風景が変わったと感じています。

SOUPの活動としては8年間を通じて、何人かのアーティストや福祉アトリエが全国区になって、その人たちが自発的に活動をしたり、地域の人たちと意見交換をしたり、プログラムを作る側になったりしていて。相談に来ていたサポートされる側の人たちが、サポートする側、プログラムを作る側になって来ているというのは大きな変化だと思います。

この「じょうほうスウプ」で宮城県内の障害のある人たちの文化活動拠点を紹介していますが、8年前はこんなにまとめられるほど情報がありませんでした。これは、文化芸術活動を、生きがいの一部としてやるような人がすごく増えてきたということで、SOUPの中間支援としての成果だと思っています。

【写真】冊子「じょうほうスウプ」を手に話をする柴崎さん

ダイバーさん

いい変化が生まれてきているんですね。その変化をさらに良くしていくためにも、これから変えていきたいことはなんでしょうか。

柴崎さん

障害のある人が芸術鑑賞をこの1年にしたかという調査(編集部注:文化庁「平成29年障害者の文化芸術の鑑賞活動及び創作活動実態調査」)で、鑑賞したことがある人が45%しかおらず、その理由を聞くと、「関心がない」と「特にない」を合わせて50%以上になるという結果が出たんです。それは、障害者に文化体験が意識もされてないということで、背景にある社会的排除という課題を感じました。

だから私は実践したいんです。私たちの支援センターは、今向き合っている人たちが必要と思うものを自分たちなりに編集してプログラムを作っています。支援センターは、行政のあらゆる課の人と連絡調整できる強みがあるので、地域と向き合って、クリエイティブにプログラムを作っていくべきです。行政は政策を整理するために課を設けているけど、私たちの生活の中では、アートも文化も教育も生涯学習も経済も何ら分離されていないじゃないですか。支援センターは分かれている情報を繋げて行くことができるんです。

ダイバーさん

支援センターが障害者とさまざまなサービスのパイプになるということですね。

髙橋さん

それもありますが、SOUPでは、障害のある人たちが支援されるだけではなくて、主体的に活動を作っていっています。こちらが支援する側で、向こうがされる側みたいな関係性になるのではなく、一緒に活動を作っていくやり方を学び、実践したいと思っています。

柴崎さん

今は、インクルーシブ社会と言われる、障害がある人が地域でも企業でも教育の現場でも混ざっていく時代です。だから、当事者たちに、もっといろんなこと言っていいし、やっていいし、要求していいし、仲間を作っていいということを伝えたい。次の時代を支える10代20代に向けた活動もどんどんしていって、声を上げていく仲間を育てたいと思っています。

【写真】広いスペースを見学するシティさんとダイバーさん。真ん中に仕切りがあり、その右側は自転車や工具などの置き場、左側は広々とした作業スペースになっている。

ワークショップなどができるスペース

ダイバーさん

支援センターという名前だからといって、支援を受けに行くだけではなくて、要望を伝えたりしてもいい、むしろそうやって主体的に行動してほしいということですね。

柴崎さん

「魚の取り方を教えるのであって、魚を与えるんではない」ってNPOでよく言われるんです。ものを渡したり、技術を渡すんじゃなくて、そのものの得方とか、情報の取り方とか、自己実現していくための機会とか、環境作りのための知恵とかを渡すものだということです。それが自立や自信につながりますから。

だからうちは2年で集中的な支援は区切りますよと言っていて、3年目からはみなさん自身が、例えば助成金を獲得して活動を継続していくとか、自分たちで売り上げを伸ばすために努力していい商品を作るとかしてくださいと。そういうことができるための方法論は伝えるからと言っています。

障害のある人たちも、主体者であり、法律のもと環境を享受する側でもあるし、それを作っていく側でもあるんです。そういう認識で一緒に生きていけるようにしたい。

【写真】障害のあるアーティストの作品をグッズ化した商品を見学するダイバーさんとシティサン。しろくまを描いたバッグや色とりどりのTシャツ、靴下などがある。

商品化された作品も展示されている

ダイバーさん

本当に支援センターがそういう場になったら素晴らしいですけど、そもそも支援センターはすべての都道府県にあるわけではないし、地域によって機能にも意識にも差があると感じるんですが。

柴崎さん

それはそうですね。法律で地方公共団体に求められている施策は同じなのに県によって予算規模が何倍も違っています。支援センターの財源が一律ではないというのは不公平ですよね。

どこにいるかで、享受できるサービスが違うというのは、私が東北でこの活動を始めたときに感じていたことでした。関西と比べると東北には障害者がアートを享受できる環境が整っていませんでした。だから全体の支援センターを底上げしていく必要があるし、センター職員も主体性が重要だということを自覚してもらえるように、全国連携でトレーニングなどをしていく必要もあると思います。

そのうえで、それぞれの地域でいろいろな実践をしながら、地域が得意としている領域や自治体が政策として力を入れている領域、県民が大切にしている文化を切り口に、独自のプログラムを作っていけばいいんじゃないでしょうか。

シティさん

本当にまだ環境づくりの段階で、本格的に「芸術文化推進」が進むのはこれからという感じですね。SOUPは南東北・北関東の広域センターの機能も果たしていると聞きましたが、底上げに取り組んでいるということでしょうか。

柴崎さん

去年から広域センターをやらせてもらっていますが、去年からは茨城県、今年からは群馬県で支援センターを設置しようとしているところです。各地域の方たちが、心を込めて活動しています。支援センターなり、核になる個人や団体が増えることが、障害のある人たちの遊びや学びも増えていくし、それを通じていろんな人が交流していく環境を作っていくので、これも大切な活動だと思っています。

ダイバーさん

SOUPの支援のあり方は、障害のある人が主体的に行動できるようになる方向に向いていて、それがこれからインクルーシブな社会を実現するためには非常に重要なことだということが実感できました。支援センターというと「どういう支援をしてもらえるのか」と考えがちですが、誰もが支援される側であると同時に支援する側でもあると考えることが大事だと思いました。

【イラスト】1枚の絵の前でダイバーさんと白杖を持った人、盲導犬を連れた人が話しをしている。

シティさん

2つの支援センターを訪ねてみてどうでしたか?

ダイバーさん

難しいことも色々あるけど、土屋さんも二村さんも柴崎さんも髙橋さんも、携わっている他の方々もいきいきと活動されていて、こういう人たちが支援センターにいるなら、障害者の文化芸術活動を取り巻く環境はきっと良くなっていくと実感することができました。

私も自分の地域の支援センターがなにか面白そうなことをやってないか見てみて、参加できそうなものがあったら参加したいと思います。アートやカルチャーを通してインクルーシブな共生社会を目指すためには、自分を部外者だと思わず、積極的に関わっていくことが必要ですね。

取材協力:岐阜県美術館仙台フォーラス