STORIES
【イラスト】こちらを見つめるふたつの目。左は黒目、右は白黒が逆転して黒目が白目。

(シリーズ)新しい世界のとびら

(このシリーズについて)自分が接している世界だけが、世界の全てではありません。 身体の特性や知覚の方法によって、世界のとらえ方は変わるもの。 そんな新しい世界へのとびらを開けた人に話を聞きました。 未知なる世界を体験して、わくわくしてみませんか。

とびらを開けた人
田中みゆきさん vol.01

(更新日)2022年11月30日

CREDIT

[話]  田中みゆき

[イラスト]  山口洋佑

[構成]  岡田カーヤ

本文

(田中みゆきさんのプロフィール)

田中みゆき

キュレーター、プロデューサー。文化施設での勤務後、「障害は世界を捉え直す視点」をテーマに活動を開始。見えないという視点から映画制作の過程を描いた映画『ナイトクルージング』(2019 年公開)、音声ガイドから着想したテキストを用いて、見える人と見えない人が一緒にダンスを鑑賞する『音で観るダンスのワークインプログレス』(2017 年~、KAAT 神奈川芸術劇場など)、音からイメージを立ち上げてプレイする『オーディオゲームセンター』(2017 年~、銀座ソニーパークなど)などを企画、プロデュース。


第一のとびら
義足は新しい身体の可能性

【イラスト】かっこいい義足

人間の身体の未来を
先取りする人たち

2008年の北京パラリンピックで、南アフリカ共和国代表のオスカー・ピストリウスが、短距離種目で3つの金メダルに輝いたときのこと。両脚の膝から下が義足だった彼の走りが力強く躍動していたのを見て「これは新しい身体の可能性だ」と衝撃を受けました。

人間はこの先さらに寿命が延びて、身体の一部が人工物に取って代わる時代が来るでしょう。彼らはそれを先取りした、時代の先端をいく人たち。

その後、義足ユーザたちに会うと、パーツの素材を変えたり、写真を貼ったり、いろんなヒールの高さに合わせて足首の角度を変えられるようにしていたり、スマホのケースを変えるように、装飾や工夫をされている。

“人間らしい身体”という概念からはなれることができたら、そこにはデザインの可能性が広がっていると感じました。


第二のとびら
足は2本ないといけないの?

【イラスト】クエスチョンマークが書かれたピンク色の図形。真ん中がへこんでいる

自然な姿と求められる姿、
社会とのコミュニケーションのずれ

日本科学未来館で『義足のファッションショー』に関わったとき、幼いころに片足を切断した女性に話を聞きました。

彼女は片足で移動できますが、外出時は義足をつけるといいます。なぜなら、義足をつけないと、親やまわりの大人が悲しむから。「脚ってなんで2本ないといけないんですか?」という彼女の言葉を聞いたときの衝撃は、今も忘れられません。

問題は彼女の身体でも義足でもなく、本人が思う自然な姿と、社会が求める姿が違っているために起こる、コミュニケーションのずれにこそあるのではないかと思いました。


第三のとびら
盲学校での体操

【イラスト】黄色いカニ。今にも歩き出しそう。

見えないから生まれる余白に触れる

盲学校へ見学に行くと、体育の授業で体操をしていたんです。先生が「腕を上げて」というと、上に上げる人もいれば、横に上げる人、前に上げる人もいて、みんなばらばら。

でも「腕を上げて」といわれたことに対して、すべて良しとされていた。見えていると、無意識のうちに先生や他の生徒が上げている方向に従おうとしてしまうけれども、見えていないと確かめようもないし、指示に余白があるから、自分が思う方向に上げていい。見えないことによる解釈の広がりをおもしろいと感じたできごとでした。


関連記事