STORIES
【イラスト】向かい合う男性と女性。ほほえみ合う。

(シリーズ)新しい世界のとびら

(このシリーズについて)自分が接している世界だけが、世界の全てではありません。 身体の特性や知覚の方法によって、世界のとらえ方は変わるもの。 そんな新しい世界へのとびらを開けた人に話を聞きました。 未知なる世界を体験して、わくわくしてみませんか。

とびらを開けた人
田中みゆきさん vol.04

(更新日)2022年12月27日

CREDIT

[話]  田中みゆき

[イラスト]  山口洋佑

[構成]  岡田カーヤ

本文

(田中みゆきさんのプロフィール)

田中みゆき

キュレーター、プロデューサー。文化施設での勤務後、「障害は世界を捉え直す視点」をテーマに活動を開始。見えないという視点から映画制作の過程を描いた映画『ナイトクルージング』(2019 年公開)、音声ガイドから着想したテキストを用いて、見える人と見えない人が一緒にダンスを鑑賞する『音で観るダンスのワークインプログレス』(2017 年~、KAAT 神奈川芸術劇場など)、音からイメージを立ち上げてプレイする『オーディオゲームセンター』(2017 年~、銀座ソニーパークなど)などを企画、プロデュース。


第十のとびら
音声ガイド

言葉にすることで
見える世界もある

映画や映像の視覚情報を補助する「音声ガイド」をつくるための養成講座に通っていました。そこで発見したのは、同じものを見ても、なにを感じるかは人それぞれだということ。

たとえば男女が向かい合って立っている1分間の映像に音声ガイドをつけるとします。
「男女が向かい合って立っています」だけだと具体的なイメージが湧かないので、一人ひとり見たものを言葉にすると、服装の話をする人、表情の話をする人、背景にある景色の話をする人など、さまざま。同じ見えているといっても、見ているところがこんなにも違うんだということがわかります。

私たち日本人は暗黙のコードのように空気を読んで、あえて発言しないという場面が多々あります。でも、見えていることとわかっていることは、同じではない。

たとえばどこかの店に行ったとき。
その場に目の見えない人がいると
「どういうつくりになっているか」
「どのように人が座っているか」
「どんな人がいるか」
などを話すことになります。

普段は口にしないけど、見えない人がいることでそうした会話が始まっていく。それって、すごく良い対話の機会だと思うんです。見えない人は情報を得られるし、見える人同士でも、お互いがその状況をどうとらえているかが理解できるから。

障害のある人って、「助けてあげる」というのではなく、むしろ私たちがこれまで見えてなかったことに「気づかせてくれる」存在だと私は思っています。ただ健常者がその価値を受け取るだけでなく、彼らもこれまで得られなかった情報や体験を得ることができたり、人とのつながりが広がっていくような機会をつくりたいと思っています。

(おわり)


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